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シゲタサヤカさんの絵本「まないたにりょうりをあげないこと」 料理は味よりも見た目重視!

文:加治佐志津、写真:斉藤順子

デビュー前から食べ物を題材にした絵本ばかり描いていた

―― 今年デビュー10周年を迎えるシゲタサヤカさんは、食べ物や料理を題材にしたユーモアあふれる絵本で人気の絵本作家だ。デビュー作『まないたにりょうりをあげないこと』では、コックたちが慌ただしく調理に勤しむレストランを舞台に、隙を見てつまみ食いを重ねて太っていく“まないた”の姿を描いた。

 子どもの頃から、コックさんや料理の絵本をよく読んでいたんです。寺村輝夫さんと和歌山静子さんの王さま絵本シリーズが特に好きで、中でも王さまが自らコックさんとなって料理を振る舞う『王さまレストラン』は大のお気に入りでした。

 料理については昔から、作ったり食べたりすることよりも、眺めるのが好きでした。味よりも何よりも見た目重視(笑)。レストラン特集とかグルメ特集が掲載された雑誌もよく買うんですが、お店に行ってみたいというわけではなくて、きれいに盛り付けられた料理をただ眺めて満足しています。

 20代半ばから、アルバイトをしつつ絵本のコンペに出しては落ち、また出しては落ち……という生活を5年ほど続けていましたが、当時の作品も、料理や食べ物を題材にした絵本ばかり。講談社絵本新人賞で3年連続佳作を受賞したのを機に、3度目の佳作だった『まないたにりょうりをあげないこと』でデビューしたんですが、佳作を受賞した3作は、どれも同じレストランを舞台にしたものでした。がやがやとした厨房やずらりと並んだ食材、お皿に盛られた料理など、自分が描きたいものを思う存分描くには、レストランが舞台のお話がいいと思ったんです。

「まないたにりょうりをあげないこと」(講談社)より

 『まないたにりょうりをあげないこと』のアイデアは、以前、逗子に住んでいたとき、駅前の魚屋さんでよく見た大きなまないたが原点になっているんだと思います。閉店間際に行くと、1メートルくらいはありそうな大きくて分厚いまないたが、お店の前に立てかけてあったんですね。それをちらっと見て、まないたが大きいのってなんだか面白いな、と思っていて。それがなんとなく頭の片隅に残っていたんでしょうね。お話をあれこれと考えていたときに、まないたが料理を食べて大きくなっていくというアイデアを思いつきました。

―― 出版にあたっては、受賞作の大まかな流れはそのままに、画面構成などを全面的に描き変えた。担当編集者とじっくりやりとりを重ねながら、何度も描き直したという。

 絵本の中のコックさんは全部で10人いるんですが、受賞作では全員、同じ顔と同じ髪型で描いていたんです。私としては面白いと思って、あえてそのようにしていたんですが、編集者さんからは「主人公と脇役が同じ顔なんてありえません」と言われてしまって(苦笑)。脇役もすべて大事なんだと教わって、そこから10人それぞれの名前やキャラを考えました。主人公の名前はジェイミーです。昔、イギリスのアイドルシェフ、ジェイミー・オリバーの追っかけをしていたので、名前をもらいました。絵本には出てこない、私の心の中だけの名前なんですけどね。

最初は10人のコックの顔と髪型がすべて同じだったが、絵本では顔も髪型もそれぞれ変化をつけて、違う人物であることがわかるように描き直した

 絵本作りの基礎もわかっていない状態でデビュー作を作り始めたので、編集者さんからは他にもたくさんアドバイスをもらいました。お皿に盛りつけられた料理をずらりと並べて描いた見開きや、まないたが料理を欲しがって「ちょうだいよ~」と泣いて甘えるシーン、歌を歌ってダイエットしようとするシーンも、「これはいりません」と言われて泣く泣くカット。その代わりに、まないたが成長する過程をもっとしっかり見せるよう描き直しました。自分にとってはどれも描きたいものばかりだったので、最初は抵抗があったんですが、次第に自分でも、まないたの成長を見せることの大切さがわかってきたので、大幅に描き直して正解だったなと思っています。

 タイトルもいろいろ検討したんですよ。受賞作は『まないたにりょうりをあげないこと』だったんですが、違うのも考えてみようということになって。『おひとよしのコック』『りょうりをくわせろ!』『くいしんぼうのまないた』『まないたマーちゃん』『おいしいりょうりがたべたいな』……でも結局どれもしっくりこなくて、元のタイトルに戻しました。

きれいに盛り付けられた料理の絵をメインに据えていたときの絵。「まないたの成長を描くことが大事」ということでボツになった

―― シゲタサヤカさんの絵本といえば、特徴的なのがキャラクターの白目。『まないたにりょうりをあげないこと』の出版前、編集者からも「本当にこのままいくんですか」と最終確認があった。

 学生時代まではちゃんと黒目も描いていたんですけど、短大卒業後に勤めていた印刷会社でイラストを描くようになった頃から、なんとなく白目で描くようになりました。どこを見ているかわからなくて怖いから、黒目もあった方がいいと、いろんな方から言われてきたんですが、私としては白目の方が表情があるように思えて、描きやすいんですよね。だからデビュー作の出版のときも、「これだけは絶対にそのままでいきたいです」と伝えて、白目を押し通したんです。

 読者の方々の反応も賛否両論ですが、「怖いもの見たさで何度も見ているうちに大好きになった」なんてエピソードも聞いたことがあるので、ホッとしています。

食べ物としりとり、好きなものを掛け合わせた新作絵本

―― 二度の出産を経て、4年半ぶりに新作絵本が出版された。タイトルは『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』。商店街の食べ物たちが集まって「しりとり大会」を開催する、食べ物満載のユーモア絵本だ。

 私が絵本作家を目指すようになったのは、パレットクラブスクールの絵本コースに通ったのがきっかけなんですが、その卒業制作で作ったのが食べ物としりとりの絵本でした。食べ物を描くのも好きですが、しりとりも昔から好きだったんです。それで新作も、食べ物としりとりで作ることにしました。

 最初はもっと小さな子向けの、お話がなくて一場面一場面で展開していくような絵本を検討していたんですが、やっぱりお話のある絵本の方が作れそうだなと思って、ページを24ページから32ページに増やしてもらいました。それで「しりとりコックさん」という、コックさんが登場するお話を考えていたんですが、あるときふと、「しりとり大会」にしたら面白そうだなとひらめいて。そこから一気に商店街を舞台にしたお話ができあがっていきました。

シゲタさんがパレットクラブスクールの卒業制作として作った、食べ物としりとりがテーマの飛び出す絵本

 大変だったのは、しりとりを考える作業。使えそうな食べ物の名前をひたすらリストアップして、お話に合わせてつなげていくのに、結構な時間を費やしました。逆に食べ物をたくさん描くのは、すごく楽しかったですね。「ん」のつく食べ物たちがしょんぼり帰っていくシーンは、悲壮感をうまく表現できた気がして、自分でも特に気に入っています。

―― 絵本のラフを作っている段階で、第2子の妊娠が判明。里帰り先の実家で臨月のおなかを抱えながら描き続け、産後も赤ちゃんが寝た隙を見て制作を続けた。

 この絵本はもともと雑誌「kodomoe(コドモエ)」の付録絵本で、締め切りが決まっていたんです。当初は絵の具で描くつもりでしたが、本描きに入る前に里帰りしてしまって、締め切りに間に合わなそうだったので、線までを手描きして、普段はアナログでしている色付けをデジタルですることにしました。

「たべものやさん しりとりたいかい かいさいします」(白泉社)より

 赤ちゃんが生まれてからは、授乳や寝かしつけの合間にパソコンを開いて、3カ所だけ塗ってまたパソコンを閉じて……という感じで、少しずつ作業を進めました。色付けをデザイナーさんにお願いする話が出たり、いざとなったら夫にも手伝ってもらおう、なんて考えたりもしましたが、なんとか自分の手で完成させることができました。ハラハラしましたが、そんな実家でのドタバタの絵本制作も、今となっては懐かしい思い出です。

 今後も食べ物や料理を題材にした絵本を作っていくつもりです。今年はカレーでいこうかなと。レストランが舞台のシリーズでは、『まないたにりょうりをあげないこと』に登場する10人のコックさんを順番に主人公にしています。『りょうりをしてはいけないなべ』と『コックの ぼうしは しっている』がすでに出ているんですが、残り7人のコックさんの絵本もいつか作りたいですね。こういう絵なので、感動するお話とかは向いていないと思うんですが、親子で笑えて、それでいて「お!」となるような、驚きや発見のあるお話を書いていきたいです。

>絵本制作の裏側がたっぷりのフォト集はこち