米ミステリー界で最も権威のあるエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ主催)の発表がニューヨークであった。評論・評伝部門では北海道大学教授、竹内康浩さんの「マークX 誰がハック・フィンの父親を殺したのか」が、ペーパーバック・オリジナル部門ではナオミ・ヒラハラさんの「ヒロシマ・ボーイ」がそれぞれ候補になっていたが、いずれも受賞を逃した。
竹内さんの作品は、日本で刊行した「謎とき『ハックルベリー・フィンの冒険』」(2015年、新潮選書)をもとに、新資料を加えて英語で書き下ろした評論だ。発表に立ち会った竹内さんは「結果は残念ですが、楽しい思い出になりました。今はエドガー・アラン・ポーの短編に出てくる殺人事件について研究し、執筆しています。できれば今度は誰かが英訳してくれるといいですね」と話した。
ヒラハラさんは、広島で被爆した両親を持つ日系3世。候補作は人気シリーズ「庭師マス・アライ事件簿」の7作目で、主人公は日系人庭師の父がモデルになっている。ヒラハラさんは同シリーズの2作目で、07年にエドガー賞を受賞している。
ヒラハラさんは「広島を舞台にした作品で候補になったことを、誇りに思う。広島の原爆のような、複雑で多様な議論のある問題と格闘し、それを表現することができる。そして人々に、被爆者に共感してもらうことができる。ミステリーというジャンルがどれだけ素晴らしいものか、まさにこのことが物語っています」と語った。
日本の作品では04年に桐野夏生さんの「OUT」、12年に東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」が最優秀作品賞、18年に湊かなえさんの「贖罪(しょくざい)」がペーパーバック・オリジナル部門にそれぞれノミネートされたが、受賞は逃していた。(ニューヨーク=鵜飼啓、中村真理子)=朝日新聞2019年5月1日掲載
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