戊辰(ぼしん)戦争の軍事指導者としても活躍した、幕末の武装組織・新選組の土方歳三(1835~69)副長。その実像を史料から振り返る「没後150年特別展 土方歳三」が、東京都日野市の市立新選組のふるさと歴史館で始まった。
全5章、約220点。1階は「石田村の土方歳三」と題した第1章から始まり、「浪士組から新選組へ」「戊辰戦争での奮闘」をへて、「箱館での最期の戦い」まで。
手狭になったため、屯所(とんしょ)(詰所〈つめしょ〉)を借りた西本願寺に、当初の北集会所に加えて本堂で50畳程度貸して欲しいと談判した様子を記した「諸日記」(本願寺史料研究所保管「本願寺文書」)からは、新選組の交渉役として活躍した土方の様子がうかがえる。
このほか、移転を続けた新選組の3カ所目の屯所が「不動堂村」ではなく「西九条村」だったことがわかる史料「諸事被仰出申渡留(しょじおおせいだされもうしわたしどめ) 慶応二丙寅年七月より」(本願寺史料研究所保管・同)なども。鶏卵紙に焼き付けられた全身像で現存最古という「土方歳三肖像写真」(個人蔵、5月11日と日曜のみ公開)もある。
一方、2階の第5章「語り継がれる土方歳三」では、従来、映画などでは局長の近藤勇が主役だったのが、土方が主役の小説「燃えよ剣」(1962年連載開始)のヒットを機に一気に土方人気が急騰した経緯などを紹介する。少ない史料の中に土方の軌跡を位置づけようとした、真摯(しんし)な展覧会だ。6月30日まで、5月6日を除く月曜と5月7日休館。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2019年5月1日掲載
編集部一押し!
- 著者に会いたい 佐滝剛弘さん「観光消滅 観光立国の実像と虚像」インタビュー データで解明する問題点 朝日新聞読書面
-
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 群像新人文学賞・豊永浩平さん 沖縄に生まれ、沖縄を知らなかった。ここから始めないと、この先書けない 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#20 清繭子
-
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 きさらぎ駅、くねくね……新しい時代の怖い話を追いかけて 廣田龍平さん「ネット怪談の民俗学」インタビュー 朝宮運河
- 中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 代打職人も俳優も待つのが仕事。「11人いる!」が教えてくれた使命 中江有里の「開け!野球の扉」#21 中江有里
- インタビュー 「ハリー・ポッターと賢者の石」日本語版出版から25 年 翻訳者・松岡佑子さんインタビュー 「ここまで惚れ込んだ作品、他にない」 坂田未希子
- インタビュー 三好愛さん初絵本「ゆめがきました」インタビュー「眠るのが苦手な子も、夢を楽しみながら眠って」 阿部花恵
- イベント 「今村翔吾×山崎怜奈の言って聞かせて」公開収録に、「ツミデミック」一穂ミチさんが登場! 現代小説×歴史小説 2人の直木賞作家が見たパンデミックとは PR by 光文社
- インタビュー 寺地はるなさん「雫」インタビュー 中学の同級生4人の30年間を書いて見つけた「大人って自由」 PR by NHK出版
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社