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制約の中で咲く、美と職人芸 魔夜峰央さんが好きな本「ローマ帽子の謎」

魔夜峰央さん=篠塚ようこ撮影

 本格ミステリーが大好きで、名作はだいたい読んでいます。初めて読んだのは中学1年のときで、それがこの作品。当時手にした本は『ローマ劇場毒殺事件』という邦題でした。それまで江戸川乱歩の少年探偵団シリーズもよく読んでましたから、もっと大人っぽいものに挑戦しようと思ったのかな。
 探偵エラリーは鼻眼鏡がトレードマーク。「とった方がいい男よ」「知ってます。だからかけてるんです」という会話が別の作品で出てくるほどの美青年。エラリーを敬愛する召使の少年ジューナとの関係性も楽しめます。
 ほかの作家が描く探偵もそれぞれ存在感がありますね。クックロビンの童謡が鍵を握る『僧正殺人事件』(ヴァン・ダイン)のファイロ・ヴァンスは博学な独身貴族で、ディクスン・カー作品のアンリ・バンコランはいつも正装で悪魔的な風貌(ふうぼう)。
 好きなキャラクターがアニメや映画になると、がっかりすることも多いですが、その点、私は幸せです。『翔(と)んで埼玉』のGACKTさんも二階堂ふみさんも、ここまでやるかと。『パタリロ!』実写映画版も、舞台に続き加藤諒(りょう)くんが主演してくれますし。監督もスタッフも大まじめに一生懸命、ばかばかしいことに取り組んでる。
 制約がある中で職人芸を追求する人にひかれます。ミステリーもそう。私の肩書も世間的には「漫画家」ですが、初めて名刺を作ったときからずっと「漫画製作請負業」と入れている。漫画を作る職人です、という意思表示。だから「芸術家」と言われるよりも「芸術使い」と言われたい。忍術使いや魔法使いのように、芸術という術で人をたぶらかす職人でありたいです。(聞き手・藤崎昭子 写真・篠塚ようこ)
=朝日新聞2019年5月15日掲載