韓国の人気絵本作家ペク・ヒナさん。本屋で見つけて私の好みにぴったりだったので、こういう本は放っておけないと思い、翻訳されている彼女の絵本を4、5冊まとめて買いました。
とにかく登場人物の人形の造形が独特です。製作の工程を調べたら、まず粘土で人形を作って、服、家具、背景まで手作りしたうえで場面を構成し、写真撮影している。私、いじわるだから細かく見たんですけれど、使い回ししている人形は一体もないですね。みんなどこか違っていて表情もひとつひとつ変えている。そのすべてを一人でこなすという、とてつもないパワーが詰まっています。
裸の筋肉の張った感じとか、タイルの目地の黒ずみとか、本当に細かいところまで作り込んである。圧巻はこのページ、うふふふ、主人公の女の子が天女の背中に乗って水風呂で遊ぶシーン。見ていてなごむし、アートとしてもすごい。こんなふうにして遊べたら楽しいだろうなあって。昔から写真が絵本になったものは好きだったんです。松谷みよ子さんの『モモちゃんとプー』のように物語だけどリアルな世界観にワクワクしていましたね。
週刊誌に書評を書いているんですが、煮詰まると現実逃避で絵本を開くこともあります。天女にヤクルトをあげるために、無になってあかすりされている女の子の表情なんか最高です。おかあさんも無表情で、こんなおかあさん、昔近所にいましたよね。昭和の日本のようで懐かしいのかもしれません。最後の天女の恩返しもほほ笑ましくて心温まります。開くたびに発見があって、全然飽きない。こんな出会いってなかなか無いと思います。(聞き手・久田貴志子 写真・篠田英美)=朝日新聞2020年2月19日掲載