今年2月に逝去した著名作家の絶筆となる本書は、今の日本が「三度目の『敗戦』」状態にあると見る。著者によれば、敗戦とは価値観の大転換を意味する。
一度目の敗戦は「世の中の仕組みが変わらないことが正しい」とされた江戸時代の価値観が黒船来航で打ち砕かれ、明治維新からの「勤勉努力」と「進取の気性」にとって代わられたこと。日本はこれに上手(うま)く対処して、産業革命で培った近代的な軍事力で日清・日露戦争に勝利し、第一次世界大戦でも戦勝国になる。
しかし第二次大戦では、規格大量生産を得意とする米国の物量作戦に敗れる。この第二の敗戦で、日本は「安全」「平等」「経済成長」を目指す新たな価値観に移行。1972年ごろから官僚主導の規制政策で「安心」「安全」「清潔」な天国を実現した。だが、多様性と意外性を失い、高齢化によって崩壊しつつある。これが(現在の)第三の敗戦だ。
これからは官僚主導を止(や)めて「楽しい日本」を目指そうという。ロボットやAIが生み出す余暇時間を使って何か上達する楽しみを持ち、第四次産業革命がもたらす社会変化について考える。そこに「三度目の日本」の姿があると著者は説く。=朝日新聞2019年5月18日掲載
編集部一押し!
-
朝宮運河のホラーワールド渉猟 創作という魔物に憑かれて 小説家をめぐる怪奇幻想譚の収穫3点 朝宮運河
-
-
朝宮運河のホラーワールド渉猟 久永実木彦さん「雨音」インタビュー 悲劇に抗う“祈り”の物語 朝宮運河
-
-
インタビュー 出口かずみさん「うろおぼえ一家のおでかけ」インタビュー 子どもも大人も記憶の“謎解き”が楽しめる絵本 大和田佳世
-
インタビュー 角川まんが学習シリーズ「日本の歴史」 刊行10年でジェンダー表現を更新した理由 監修者・稲田奈津子さんインタビュー 阿部花恵
-
インタビュー 菰野江名さん「まどろみの星たち」インタビュー 24時間の夜間保育園、利用者の事情が描き出す社会 吉川明子
-
展覧会、もっと楽しむ 「生誕100周年記念 安野光雅展」開催 発想力、空想力、表現力に満ちた安野ワールドへ 日下淳子
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社
-
トピック 【プレゼント】第68回群像新人文学賞受賞! 綾木朱美さんのデビュー作「アザミ」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
トピック 【プレゼント】柴崎友香さん話題作「帰れない探偵」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社