今年2月に逝去した著名作家の絶筆となる本書は、今の日本が「三度目の『敗戦』」状態にあると見る。著者によれば、敗戦とは価値観の大転換を意味する。
一度目の敗戦は「世の中の仕組みが変わらないことが正しい」とされた江戸時代の価値観が黒船来航で打ち砕かれ、明治維新からの「勤勉努力」と「進取の気性」にとって代わられたこと。日本はこれに上手(うま)く対処して、産業革命で培った近代的な軍事力で日清・日露戦争に勝利し、第一次世界大戦でも戦勝国になる。
しかし第二次大戦では、規格大量生産を得意とする米国の物量作戦に敗れる。この第二の敗戦で、日本は「安全」「平等」「経済成長」を目指す新たな価値観に移行。1972年ごろから官僚主導の規制政策で「安心」「安全」「清潔」な天国を実現した。だが、多様性と意外性を失い、高齢化によって崩壊しつつある。これが(現在の)第三の敗戦だ。
これからは官僚主導を止(や)めて「楽しい日本」を目指そうという。ロボットやAIが生み出す余暇時間を使って何か上達する楽しみを持ち、第四次産業革命がもたらす社会変化について考える。そこに「三度目の日本」の姿があると著者は説く。=朝日新聞2019年5月18日掲載
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