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スピードワゴン井戸田潤さん、三国志で一緒に酒を飲みたい武将は魯粛

文:篠原諄也 写真:斉藤順子 ©関羽像 青銅製 明時代・15~16世紀 新郷市博物館蔵

ちょっと抜けてるバカっぽいキャラに惹かれた

――三国志の「赤壁の戦い」を描いた映画「レッドクリフ」のDVDでは副音声を担当した三国志ファンの井戸田さんですが、推しメンっていますか?

 呉の軍師、魯粛です。一番有名な「赤壁の戦い」で、蜀と呉の同盟を実現させる人物です。蜀の孔明と呉の周瑜を会わせて、戦いに向かわせる。どっちも天才だから、二人の間で右往左往するんです。そのやりとりが凄く可愛いっていうか。

――どんなやりとりなんですか?

 たとえば、だんだん孔明と周瑜は争うようになります。孔明は優秀だから、周瑜の策を全部見抜いている。周瑜が孔明を殺そうとしても、孔明はすでに気づいています。それを魯粛は最後の最後に気づいて「え、孔明すごくね?」って驚いたり。前、芸人仲間で三国志トークをしたときに「魯粛とは一緒に飲みに行きたい」という話になりました。

――三国志の人物と飲み会ですか(笑)

 「誰と飲みに行きたいか」で盛り上がって。天才揃いだしおおよその人物はこわいですよね。たとえば、曹操と飲みに行ったら、ひょっとしたら殺されるかもしれない。劉備は真面目だから、楽しく飲めない。「お金は俺が払うよ」と言い張って、「いや俺が払うよ」と言っても聞かなそうで、そういうやりとりが面倒くさそう。孔明は何を喋ってもこちらの心中を見透かされそうでイヤです。張飛は酒を飲んだら暴れそうで面倒だし、関羽からはすぐ説教されそう。そんな中で、唯一魯粛は仲良くできそうだな、と。「あいつちょっと面倒臭いよね」とか親しく語り合えそうです。呉と蜀を行き来しているから、情報もたくさん知っているだろうし。

――他に好きな人物はいますか?

 最初に親近感を感じたのは魯粛ですが、一番好きなのは関羽です。関羽は義に尽くした男で、劉備の右腕。一度、劉備の敵の曹操の魏に降ってるんですけど、劉備の約束をちゃんと守って、また帰ってくる。戦略もすごいし、腕っ節も強い。赤兎馬も乗りこなす。パーフェクトな人物です。

――そもそも三国志に出会ったきっかけは?。

 15年ほど前の話なんですけど、大部屋の楽屋で芸人さんたちが三国志の話で盛り上がってたんですよ。僕は全然知識がなくて、その輪に入れなかったんです。それでたまたま次の日、学校でロケがあって。教室の壁を見ると日本と中国の歴史年表が貼ってありました。ボケーっと見ていて気づいたんですけど、三国志の頃の日本って、まだ邪馬台国の卑弥呼の時代なんです。日本の戦国時代の1000年以上も前だったなんて凄いなと思って。その日の仕事帰りに古本屋で横山光輝さんの漫画「三国志」(愛蔵版)を全30巻買ったんです。

――いきなり全巻買ったんですね。

 最初は知識がなかったから、読むのがしんどかったです。でもこれは最後まで読まないといけない、読んだら必ず何かあるぞと思って。だんだん夢中になって、バーっと全巻読み通しました。

――読み通してみて、どうでした?

 三国志は強い人物ばかりのイメージがあったんですが、実はちょっと抜けてるバカっぽい奴もいるんですよ。ずる賢い奴、弱っちい奴もいたりして。最初はそういうキャラクターに愛着が出てきました。

―― 一番好きな戦いは?

 それはもう「赤壁の戦い」しかないでしょう。魏が攻めてくるから、呉と蜀が手を組んで打ち返す。魏が船で大軍で押し寄せてくるなか、呉の軍は火のついた船をぶつけて炎上させます。その時に蜀の孔明はうまく「東南の風」を吹かせるんです。魔術を使ったとされていますが、農家の出だから天気のことを深く理解していたんでしょう。圧倒的な兵力の差があったのに、呉と蜀が勝利を収めます。とにかく一番スリルがあって好きな戦いです。

――自分も戦をしてみたいと妄想したりしますか?

 いや、怖いっすもん、戦なんて行けないですよ。何万本も矢が飛んできて、ぶち殺されます。三国志(演義)には信じられないようなエピソードがたくさんある。たとえば、関羽は腕に毒矢を刺されてしまって、名医の華佗に手術してもらいます。麻酔なしで手術してもらいながら、その最中に平然と囲碁をやってるんですよ。そんな奴らとまともに戦えないでしょう。

日本は「三」に支配されている?

――井戸田さんは三国志を知らない人に向けて、その魅力をどう説明しますか?

 実は日本の文化に三国志が根付いていることを話します。よくビジネスの場でも「三顧の礼」といって、三回訪ねて相手に礼を尽くして、やっと仕事が始まるといわれたりしますね。日本はすごく「三」に支配されてるんです。我々が生きている区切りの期間って「三」が多い。学校も三学期だし、テレビの世界もワンクールは三ヶ月。デートも三回目でだいたいキスできるでしょう? 日本は三国志の影響、すごい受けてます。

――「三」は区切りがいいんですかね(笑)

 それに孔明が最初に作ったとされる身近なものは多いんです。一輪車や紙芝居、そして肉まんもそうだという説があります。昔は川の氾濫などがあると、神が怒っているとされました。そんな時、人の首を神にお供えしていました。でも、孔明がそれはよくないと思って、小麦粉で人間の頭の形を作って、中に牛などの肉をつめた。それが肉まんの起源だという説があります。孔明がいなかったら、俺ら今、肉まん食ってないですから。

――三国志を好きになってから15年ほどで、人物の見方の変化はありました?

 先日、テレビのロケで中国の三国志ゆかりの地をまわりました。印象的だったのは、日本では曹操は残虐な人物とされることが多いですが、故郷の安徽省亳州市では、彼は英雄になっていること。でっかい像が立っていたし、その土地の人々は「立派で素晴らしい人物だ」と話していました。見る視点によって変わるんだな、と思いました。

――実際に中国に行ってみてどうでしたか?

 一番印象に残っているのは、向こうの人がしてくれた飲み会です。「日本からわざわざ取材にきてくれた」と歓迎してくれました。そこで白酒(パイチュー)というウォッカみたいな強いお酒を飲まされて。一人ひとりまわってきて、手酌をしてくれました。

――三国志の話もするんですか?

 その人たちとはそんなにしなくて、日本と中国の関係についての話になりました。向こうのおじさんが「日本と中国は仲良くするべきだ」と力説していた。三国志など中国の文化は日本にも色濃く残っている。夫婦のような関係だから、離婚するようなこともないし、一緒に運命共同体として仲良くしていきたい、と。そんなことを白酒を飲みながら訴えていました。「すごいなあ、素敵な話だなあ」と思って。

――最後に井戸田さんにとって、三国志とは何でしょう?

 何だろう、難しいですね。今の話でいえば、ちょうど白酒みたいなもの。飲むと、キツめの刺激がある。男たちの命の削っての戦いは、本当に魅力がある。1回読むと、もうずっと三国志に酔ってしまうんです。

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