関東大震災で江戸時代の痕跡が消え、戦争、高度成長、バブルへと続いた昭和。その時代を生きた落語家46人の、人と芸を描いたのが『昭和の落語 名人列伝』だ。執筆は、今岡謙太郎・中川桂・宮信明・重藤暁の4氏。
江戸(東京)落語では、八代目林家正蔵についての見方がおもしろい。「一言一句まで自分の納得いくやり方でしか演じなかった」八代目桂文楽、「やってみないと自分でもどうなるかわからない」五代目古今亭志ん生とは対照的で、演目の眼目を見抜き、状況に応じて「幾通りもの演じ方・時間で演じることができた」正蔵は、落語の骨法を後代に伝えたという。
上方(関西)では、四代目桂米團治。独自の「理論」と純な「実践」を共存させ、芸を磨いた。志半ばで亡くなるが、弟子の三代目桂米朝によって大成され、落語界の大きな潮流となったとみる。
五代目柳家小さん、三代目古今亭志ん朝、七代目立川談志、二代目桂枝雀ら、おなじみの顔ぶれがどう書かれているか。それを読むのも楽しみだ。(石田祐樹)=朝日新聞2019年7月20日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 恩田陸さん「spring」 バレエの魅力、丸ごと言葉で表現 朝日新聞文化部
-
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 黒木あるじさん「春のたましい」インタビュー 祀られなくなった神は“ぐれる”かもしれない 朝宮運河
-
- 杉江松恋「日出る処のニューヒット」 諷刺の名手・柚木麻子が「あいにくあんたのためじゃない」で問うたもの(第13回) 杉江松恋
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- インタビュー 「親ガチャの哲学」戸谷洋志さんインタビュー 生まれる環境は選べない。では、どう乗り越える? 篠原諄也
- BLことはじめ BL担当書店員が青田買い!「期待のニューカマー2023」 井上將利
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社