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「昭和の落語 名人列伝」 昭和の落語家たち、その人と芸

  関東大震災で江戸時代の痕跡が消え、戦争、高度成長、バブルへと続いた昭和。その時代を生きた落語家46人の、人と芸を描いたのが『昭和の落語 名人列伝』だ。執筆は、今岡謙太郎・中川桂・宮信明・重藤暁の4氏。
 江戸(東京)落語では、八代目林家正蔵についての見方がおもしろい。「一言一句まで自分の納得いくやり方でしか演じなかった」八代目桂文楽、「やってみないと自分でもどうなるかわからない」五代目古今亭志ん生とは対照的で、演目の眼目を見抜き、状況に応じて「幾通りもの演じ方・時間で演じることができた」正蔵は、落語の骨法を後代に伝えたという。
 上方(関西)では、四代目桂米團治。独自の「理論」と純な「実践」を共存させ、芸を磨いた。志半ばで亡くなるが、弟子の三代目桂米朝によって大成され、落語界の大きな潮流となったとみる。
 五代目柳家小さん、三代目古今亭志ん朝、七代目立川談志、二代目桂枝雀ら、おなじみの顔ぶれがどう書かれているか。それを読むのも楽しみだ。(石田祐樹)=朝日新聞2019年7月20日掲載