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「100トンの握力」で石炭をダイヤモンドに! 板垣恵介「バキ道」(第105回)

 シリーズ累計発行部数、実に7500万部! 1991年に始まり、四半世紀以上にわたって「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)の看板作品であり続ける「バキ」シリーズは、まさしく平成を代表する格闘技マンガだろう。

 あらゆる格闘家が集まり、「武器さえ使わなければ何をしてもいい」という究極ルールでぶつかり合う「東京ドーム地下闘技場」で不動のチャンピオンとして君臨する範馬刃牙(バキ)は史上最強の高校生。著者・板垣恵介は少林寺拳法二段、ボクシングで国体出場という経歴を持つバリバリの格闘技マニアであり、格闘技に対する愛と異様なまでの“超人へのあこがれ”から人間離れした怪物たちが次々と登場する。第1部『グラップラー刃牙』、第2部『バキ』を経て、「地上最強の生物」と称される父・勇次郎と対決した第3部『範馬刃牙』でシリーズ完結かと思われたが、あの宮本武蔵が現代によみがえるというトンデモ展開で第4部『刃牙道』が始まり、昨年から第5部となる『バキ道』が連載されている。

 宮本武蔵に続いて『バキ道』で登場するのは野見宿禰(のみのすくね)。垂仁天皇(第11代)の時代、当麻蹶速(たいまのけはや)と行った日本最古の天覧試合に勝ち、「相撲の祖」として知られる野見宿禰の272代目の子孫に当たり、正式に2代目を継いだという人物だ。
 「バキ」シリーズ最大の魅力であるファンタスティックな大ボラは今回もすごい。石炭に100トンの圧力を加えるとダイヤモンドに変わるそうだが、なんとこの宿禰、石炭の塊を握りしめてダイヤモンドに変えてしまう。つまり、100トン(10万キロ)の握力を持っているのだ! ちなみに実在する人間ではマグナス・サミュエルソンの192キロが世界記録とされているので、その500倍以上ということに。リアリティーが重視される最近のスポーツマンガで、ここまで振り切った発想は板垣恵介にしかできない!

 今回は「相撲」ということで、かつて地下闘技場「最大トーナメント」に現役横綱として出場した金竜山も久しぶりに登場。彼が1990年代当時に人気絶頂の横綱だった貴乃花光司をモデルにしていたのは明らかだが、作中ではわずか1~2年しか経っていないはずなのに、「日本相撲協会を退職した2019年現在の貴乃花」の姿で出てくる無頓着ぶりも豪快でいい。オリバ戦に続き、最新第3巻では早くも「刃牙VS宿禰」戦が始まり、相変わらず読者の予想を超えた展開を見せている。
 しかし、「バキ」シリーズはどこまで続くのか? 2年後に連載30周年を迎えるのはもはや間違いないだろう。『グラップラー刃牙』『バキ』『範馬刃牙』『刃牙道』『バキ道』という流れから、次は『範馬刃牙道』かな?