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「井戸茶碗の真実 いま明かされる日韓陶芸史最大のミステリー」 長くて深い交流の産物を知る

 500年ほど前に朝鮮半島から渡ってきて、戦国武将らを魅了した井戸茶碗(ちゃわん)とはいかなるものか。『井戸茶碗の真実 いま明かされる日韓陶芸史最大のミステリー』(趙誠主〈チョソンジュ〉著、多胡吉郎訳)は、1944年生まれの韓国人陶芸家がその起源や用途をめぐる長年の研究をまとめた一冊である。
 日本で国宝にまでなっている井戸茶碗については、その来歴に韓国でも諸説あり、例えば日本に渡る前から特別な名器とされていたという主張があるという。著者は「排斥的で国粋主義的な思考」と退けて自説を展開、「もとは朝鮮の器であったが、日本の茶道文化の産物でもあると理解するのが、穏当であろうか」と書いている。
 訳者による長いエピローグが理解を助ける。NHKディレクター時代に知り合って以来、著者とは長年の交流があり、韓国では井戸茶碗の故郷と目される地を共に訪ねた。かつての陶工たちの姿に思いをはせ、井戸茶碗とは「両国の文化文明の出会いと交流の産物」なのだと訳者は書く。本書は2人の共著の趣がある。(福田宏樹)=朝日新聞2019年10月19日掲載