「おたく」の名付け親で、80年代は「新人類」の旗手、評論家としてAKB48を熱く語り、大杉栄が現代の高校生に乗り移る小説で三島賞候補になった作家。なんだかすごいが、よくわからない人である。
インタビューでも3時間ぶっ続けで、南米文学や政治まで話しまくる過剰さ。「正体不明って、よく言われるんだよね。でも、これ読んだらわかります」。そう、本書は初の自伝的小説だ。
フリーのライターとして旬のアイドルや社会現象について雑誌や新聞の注文に応じてきた。60歳を前に、ふと気づいた。「自分は結婚も子育てもしていない。この年になったら煩悩もなくなるかと思ってたけど、全然成長していない」。青いまま人生の秋を迎えたことを実感し、タイトルに込めた。「外見は変わったけど、目は少年。グロテスクでしょ」
15歳で三重を出て東京へ。20歳の時、道を尋ねられたのが縁で雑誌編集部に出入りし始め、自然とライターに。時代を色濃く背負った人が目の前に現れ、通り過ぎていく。自殺してしまったアイドル、対談した週刊誌の名物編集長、伝説的美少女と国民的カメラマン、死の直前に遭遇した保守論壇の重鎮、六本木ヒルズでパーティーを開く若手文化人。フォーク歌手を夢見て田舎を脱出する友や新宿駅で学生運動の一群に囲まれる父にも時代の影は落ちる。「人」にひも付く記憶力で呼び起こした強烈な体験の数々を、重さを感じさせない文体で再現してみせた。
80年代に「消費し尽くされた」後もしぶとく生き抜いてきた。個人的な経験が切実さを持つのは、この人だけの物語ではないからだろう。「初めて自分の歌を歌った。それが時代や世代の歌になっていた」。思えば、おたくも新人類も当人の意図を超えた現象だった。そういう人なのだ。(光文社・1980円)=朝日新聞2019年10月26日掲載