北野武さんが初めての短編集『純、文学』(河出書房新社)を出した。2年前に刊行した長編『アナログ』以降、口述筆記をやめ、自身で書くように。「純粋に文学と向き合う」という気持ちからこのタイトルに。
中年の売れない芸人がやけくそにラップを刻む「ホールド・ラップ」、「O橋K泉」のハチャメチャなゴルフが楽しい「実録小説 ゴルフの悪魔」など5編からなる短編集。「おれのネタはテレビならしょっぱなから放送禁止。でも本になら書ける。文字だけでどれだけイメージできるか。言葉の流れを漫才の掛け合いみたいに出来たと思うんだけどさ」
又吉直樹さんの芥川賞に「なんであいつがと腹がたって」と書き始め、未発表作はまだ「たくさんある」そうだ。文芸誌「文芸」(冬号)にも中編を寄せる。「芥川賞と直木賞、同時にくれなきゃ嫌だ」(中村真理子)=朝日新聞2019年11月6日掲載