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下山進さん「2050年のメディア」インタビュー 部数減に苦闘する新聞業界の激動の20年を掘り起こす

下山進さん

 タイトルは「2050年のメディア」だが、未来を予測する内容ではない。ニュースのプラットフォームとして成長するヤフーとネットが普及し、部数減に苦闘する新聞業界。読売や日経を中心にこの20年の激動の歴史を描いている。

 文芸春秋に入社してから32年たった2018年に、慶応大で本のタイトルと同名の講座を始めた。「これから32年後の2050年はどうなっているのか」。メディアの未来を学生と一緒に考える講座名を本のタイトルにした。「未来を知るには、まずは足元の歴史を掘り起こす必要がある」という思いを込めた。

 大学生の頃、沢木耕太郎さんのノンフィクションを夢中になって読んだ。週刊文春の記者を経て、編集者に。携わった本の4冊が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

 一方で、「書き手」にも魅力を感じていた。週刊誌記者時代、某県警の記者クラブに「規則だから」と排除された。その頃、デビッド・ハルバースタムの『メディアの権力』を読み、調査報道に憧れを抱いた。「本物のジャーナリストになってやろうと決意しました」

 30歳の時に米コロンビア大のジャーナリズムスクールに留学。その経験を踏まえ、調査報道の衰退を描いた『アメリカ・ジャーナリズム』を出版。2作目の『勝負の分かれ目』もメディアの内幕がテーマだ。

 今年3月に退社。取材、執筆に専念、本書に取り組んだ。下り坂の新聞業界の取材は困難を極めた。事件記者だった20代のように証言者の自宅を訪ね歩き、靴を履きつぶした。

 講座を教える慶応や上智の学生に聞くと、紙の新聞を購読する人はほとんどいない。だが、ラジオ番組をネット経由で聞ける「radiko(ラジコ)」は人気だ。教壇からもメディアの現在地がよく見える。=朝日新聞2019年11月16日掲載