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「私たちが、地球に住めなくなる前に」書評 国家超えた大きな集合体が重要

評者: 長谷川眞理子 / 朝⽇新聞掲載:2020年02月08日
私たちが、地球に住めなくなる前に 宇宙物理学者から見た人類の未来 著者:マーティン・リース 出版社:作品社 ジャンル:自然科学・科学史

ISBN: 9784861827778
発売⽇: 2019/11/30
サイズ: 19cm/243,10p

人類滅亡を前にして科学は何ができるのか? 宇宙物理学の世界的権威が、バイオ、AIなどの飛躍的進歩に目を配り、人類が地球外へ移住する可能性にまで話題を展開しながら、地球と人…

私たちが、地球に住めなくなる前に 宇宙物理学者から見た人類の未来 [著]マーティン・リース

 これは、未来についての本だ。著者は英国の著名な宇宙物理学者で、現在の人類の社会がどのような位置にあり、これからの科学は社会にどのような変化をもたらすのか分析し、対処の方法を考案している。
 私たちは地球に住めなくなるのだろうか? 遺伝子操作、情報技術、ロボット、AI(人工知能)などの進展は、世界を変えてきたし、今後も変えるだろう。それは、よい未来を開くかもしれないが、とんでもなく悪い事態も引き起こせる。
 私たち人類が地球環境に与えている負荷はたいへんなものだ。生物多様性の喪失も気候変動も、人類の存亡にかかわる。そして、世界人口が90億になったときはどうするか?
 本当に汎用型のAIが実現し、機械が意思を持つようになったらどうなるか? そうなると、人間は機械を制御できなくなり、機械は自らの判断によって、私たちの利益とは別に動き出すだろう。それは、どうすれば防げるのか?
 地球環境とAIの今後は、この100年ぐらいの人類の運命を左右するだろう。ではその先は? 今から約45億年後に、私たちの銀河は別の銀河と衝突し、今から60億年後には、太陽が燃え尽きる。そのとき宇宙はどうなっているか? そこまで視野にいれるのは、さすがに天文学者。
 著者は、生身の人類が宇宙空間に進出していくというシナリオは買わない。有人宇宙探査には、命を捧げてもいいと思う個人の冒険が重要だとするが、未来の宇宙空間に展開するのは、AI搭載のさまざまなロボット機械だと論じる。
 何もかもがグローバルにつながる現在、人類の未来を左右する事柄の意思決定には、国家を超えた大きな集合体が重要だと著者は説く。その鼻先で、英国がEUから脱退するのだから、この提案はちょっと心もとない。それはさておき、本書には、学者の良心と良識による未来への考察がちりばめられている。
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 Martin Rees 1942年生まれ。宇宙物理学者、天文学者。英国王室天文官。『今世紀で人類は終わる?』など。