『県警VS暴力団』
副題は「刑事が見たヤクザの真実」。福岡県警元幹部の著者が、北九州市の特定危険指定暴力団「工藤会」との戦いをつづった。警察官人生を暴力団対策に捧げた著者ならではの生々しいエピソード満載だ。「ましな暴力団員はいるが、良い暴力団員などいない」と暴力団壊滅を訴える。
★藪(やぶ)正孝著 文春新書・935円
『熊野から読み解く記紀神話』
日本書紀編纂(へんさん)から1300年となる今年、「根の国」とされる熊野とゆかりのある5人の筆者による文章を集めた。比較文学・比較基層文化論を専門とする池田は生活の中に生きる神話を論じ、作家の中上紀は自身の体験と土地の物語を絡めてつづる。
★池田雅之・三石学編著 扶桑社新書・1045円
『炎上CMでよみとくジェンダー論』
東大教養学部の人気講義「ジェンダー論」を担当する著者が、炎上CMを四つのモデルに分類し、その構造を分析する。爆笑が起こる講義さながらにツッコミどころ満載のCMを一刀両断。古い性役割分業の追認や男性目線の表現がなぜ批判されるのかを説き明かす。
★瀬地山角著 光文社新書・902円
『映画には「動機(ワケ)」がある』
18~19年にかけて作られた、米国、メキシコなどの映画作家による12作品の評論集。作品の評価ではなく、一風変わった設定や眠くなるような演出など「なぜ、この人はこの映画を作ったんだろう?」を深掘り。作品の背景や裏側を知ることができる。
★町山智浩著 インターナショナル新書・902円
『お父さんは認知症』
ライターの著者は怒りっぽくなった認知症の父と二人暮らし。車の運転をあきらめさせるまでの修羅場、突然の大けがでの入院、庭でのたき火事件など心が休まることがない中で、ケアマネさんや介護事業所の人々の力を借りて何とか乗り切る日々がユーモアを交えてつづられる。
★田中亜紀子著 中公新書ラクレ・880円=朝日新聞2020年6月20日掲載