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「アニメタ!」で知るアニメーター 0.2ミリの誤差も許されない1本の線に、魂を込める

文:佐藤直子

 アニメのキャラクターや背景などの動きを1枚1枚の絵に描き、アニメーションの制作に欠かせないのがアニメーターという存在。実際に「エヴァンゲリヲン新劇場版」の「序」「破」などを手掛けた元アニメーター・花村ヤソによるリアルなアニメ業界の漫画が『アニメタ!』(講談社)です。

 19歳の真田幸(みゆき)は、かつて空っぽだった自分に夢中になることを教えてくれたアニメに携わることを夢見て、日々アニメーターになるため腕を磨きます。絵は下手、技術はゼロ、持っているのはアニメへの情熱と愛情だけ。そんな彼女が語るアニメの魅力は、止まっているはずの絵を動いているように見せていること。風や光など目に見えないものの存在を感じさせることができ、それを人の手で作りあげていることだと目を輝かせます。

 アニメーターが描く絵には、アニメーションの動きの中でポイントになる「原画」と、原画家が描いた原画がなめらかに動くように間の絵を描きたす「動画」の2種類あります。原画は真っ白な紙に0から動きを創造し、動きそのものを考えて描くのが特徴で、その補完の役目を担うのが動画。動画から下積みを経て原画を担当するには、『アニメタ』では試験に受からなくてはいけません。動画を2年経験するか、3カ月連続で月に500本の動画を描くことが試験資格の必須条件です。その後、原画家として認められると原画、動画の双方を見るリーダーとしても活動できるようになります。個々のクセや力量により、ばらつきの出てしまう絵を、最終的にチェックし微調整することで統一感のある絵を保っているのです。

「アニメタ!」©花村ヤソ/講談社

 幸のような新人は、他人が描いた原画の線をなぞって清書するシンプルな作業からスタートします。ペンが思うように動かず線がゆがむ、原画の勢いを表現できないなど、まっすぐ線を引く難しさを実感するのです。作品がスクリーンに映った時、0.2ミリ程度の誤差でも原画の良さを台無しにしてしまうこともあるので、線の1本1本にクオリティが要求されます。

 毎日紙が黒くなるまで、悩み苦しみながら線を描くトレーニングを重ねますが、なかなかうまくならず同期からも後れをとってしまう幸。焦りから、指導役の富士結衣子に弱音を吐くことも。すると富士から、動画は完全出来高制で単価が安く、やり直した分だけ時給が低くなること、1日15時間の長時間労働などから「アニメが嫌いになる前にやめた方が幸せ」と厳しい現実を突きつけられます。

 富士は一見冷たそうに見えますが、動画は数をこなせば必ず巧くなることや、「絵を描く楽しい気持ちは命の次に大事だから覚えておくように」などアニメーターのイロハを叩きこんでくれる愛のある先輩です。そんな先輩たちに囲まれ、幸も気持ちだけは負けていません。先輩たちがゴミ箱に捨てたラフを宝物だと拾い集めて研究するなど、アニメーターになるための粘り強さを持っています。そんな幸のデビューは1秒にも満たない足だけのカット。アニメーターへの道はまだ始まったばかり、魂をこめて作ったものは必ず視聴者の心に届くと胸を熱くし、アニメに命をかける覚悟を新たにするのです。 

「アニメタ!」で知る、アニメーターあるある!?

  • 動画は描くのではなく「割る」という表現を使う
  • テレビアニメはギリギリのスケジュールで制作することが多く、前日、当日納品ということもある
  • 100パーセント漫画作者の想像通りにアニメを作るのは難しい
  • 動画は完全出来高制のため、リテイクを出せば出すほど給料が減るし、低賃金である。アニメーターになっても1~2年は親から援助をしてもらわないと生活していくのが難しい人もいる
  • 難しいパートはフリーの凄腕アニメーターに外注することもある
  • 大学のアニメーション研究会で自主制作をしていた新人は生意気

アニメを作るひとたち

 アニメーション制作の場ではプロデューサー、演出家、シナリオライター、美術監督、声優など、それぞれの役割に応じたプロが集まっており、そのうちキャラクターや背景などの絵を描く作業を担うのがアニメーターの役割です。最近では、スマートフォンのアプリやソーシャルゲームでも多くのアニメーターが活躍しています。