40キロの減量に成功した朝日新聞記者がその道のりを本にまとめた。『医療記者のダイエット』(KADOKAWA)は、誰でも簡単に、と謳(うた)う魔法の書ではない。“肥満の沼”に引きずり込む黒幕の正体に最新科学と実体験から迫る現実的な一冊だ。
「摂取エネルギー量が使う量を上回ると太る。理屈は簡単です。過度の肥満は健康にも悪い。わかってたのに、なぜ自分は痩せられなかったのか、そこをまず突き詰めました」。そう語る著者の朽木誠一郎記者(34)は医学部出身。大学陸上部では投てきに打ち込み、腹筋は割れていた。一般企業に入社後、わずか1年で体重は115キロまで激増。痩せる約束を果たそうとせず彼女にもふられた。
医療記者として転職後、ダイエットの取材を重ねてわかった。「意志の弱さが原因で失敗するわけではない。ある研究によると、意志の及ぶ範囲は3割で、7割は環境なんです」。例えば経済的環境が悪いと食事が炭水化物に偏りがちになる。「僕も以前は、仕事帰りの深夜、500円でライスおかわり自由の店によく通った。ぽっちゃりキャラへの周囲の期待に応えようともしていた。そんな目先の利益に弱い『考え方のクセ』も、黒幕の一つでした」
環境を変えるのは難しいが、「ジムに通ったりできなくても、運動量や栄養を管理してくれるスマホの無料アプリも精度が上がっているし、インスタグラムなどSNSでダイエット宣言して仲間と励まし合うこともできます」。
カロリー制限+運動という正攻法は、そもそもゲームでいうところの「無理ゲー」に思えるという。そこをどう攻略するか。「体当たりの実践とその続け方、最新の理論を、なるべく多く紹介しました。参考になる部分を見つけてもらえたらうれしいです」(藤崎昭子)=朝日新聞2020年8月29日掲載