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YouTuber・エミリンさん「ここは負けても死なないテーマパーク」インタビュー ネガティブな自分を克服するためのマイルール

文:北村有 写真:斉藤順子

自分をさらけ出した初エッセイ

――ちょうど1年前に公開された「100の質問に答えてみた」という動画内で、「将来の夢は本を出すこと」と答えてらっしゃいましたよね。本を出したいという思いはいつ頃からあったんでしょうか?

 具体的な時期は覚えていないんですけど、「本を出したい」という夢は気づいたら意識していましたね。

 YouTuberとして活動をしていると、コメントなどでリスナーさんから悩み相談をいただく機会が多いんです。悩みの種類はさまざまですけど、やっぱり全体的な傾向としては自己肯定感の低い子が多いな、と。とくに日本の女の子は、どうしても自信が持てなかったり、自分で自分のことを認めてあげられなかったりすることが多いんだなと感じていました。

 私もまさにネガティブな人間だったんですよ。「どうしたら卑屈な自分から抜け出せるんだろう」「どうしたら生きやすくなるんだろう」って、ずっと考えていました。

 だから、いつか同じような悩みを持つ子たちに向けて、ネガティブを克服するための本を出せたらいいなあって思うようになったんです。

――「自分で自分のことを好きになる」「自己肯定感を上げるためのマイルール」がたくさん詰まった1冊になっていますね。

 どうしても物事を卑屈に捉えてしまう自分を、他の誰でもない私自身が克服できた時に、そんなマイルールを集めた本を出せたらいいなあって考えていたんです。だから、「自己肯定感を高めてネガティブな自分を克服する」というテーマは、ずっと自分の中にあったものですね。

――エミリンさんの生い立ちから現在にかけて全てをさらけ出している、まさに自伝的エッセイといった趣もありますよね。自分をさらけ出すことに抵抗はなかったですか?

 まったくなかったです!芸人時代は「エミリン星からやってきた」っていうコンセプトでキャラを作って活動していたこともあって、本当の自分を出すのが恥ずかしいっていう気持ちの方が強かったんですよね。

 YouTuberになってからは、ありのままの自分を受け入れてもらえる居場所ができたから、むしろ自分を出せば出すほどリスナーさんに共感してもらえるようになりました。

――確かにエミリンさんの動画は共感性がすごく強いです。

 「普段は言えないけど、実は私もそう思ってた!」とか、親近感を持って動画を見てくれるリスナーさんが増えました。私も言いたいことが言えてすごく楽だし、リスナーさんにも喜んでもらえる。win-winですよね。自然と、自分をさらけ出すことにはどんどん抵抗がなくなっていきました。

 自分からバーーーッと思ったことを正直に話すことによって、リスナーさんの意見も聞くこともできる。しっかり双方向のコミュニケーションができてるなって思います。お互いに気持ちがすっきりするんですよね。

生きづらい理由は「自分を出せていなかった」から

――芸人時代は、本来の自分を出せなくてつらいという気持ちもあったんでしょうか?

 そうですね、しんどかったです。

 テレビに出るんだったら、わかりやすいキャラも必要だし、売れるためのネタも必要。「テレビに出たい」っていう夢に向かって頑張っていたことは、決して間違いではなかったと思うんです。それがわかっていたからこそ、どんどん精神的につらくなっちゃったんですよね。

 ずっとキャラをつくっていたせいで、「本当の自分ってなんなんだろう?」って見失ってしまったんだと思います。自分が心からやりたいことをやってるんだったらまだマシですけど、「これが本当に自分のやりたいことなのかな?」って思ってしまったら、もうダメでしたね。

――自分を見失ってしまったことで、「芸人」が本当にやりたいことかどうかもわからなくなってしまったんですね。今のYouTuber活動には、どんな姿勢で向き合っているんでしょう?

 YouTuber活動はすっごく楽しいです! ありのままの自分を出せて、やりたいことをそのままやって、本来の自分を出せてるなって感じています。そのほうが「動画が楽しい!」ってリスナーさんにも喜んでもらえるので、とても嬉しいですね。

――動画の企画を立てる時も、リスナーの反応は参考にされていますか?

日常を見せたほうが反応が良いって気づいてからは、あまり気負い過ぎずにやりたいと思ったことをやるようになりました。

 YouTubeを始めた当初は、芸人時代にやっていたネタを動画バージョンにして公開していたんです。どちらかというと非日常的で、動画のために作り込んだネタを発表するスタンスでした。一から台本をつくって、コントのネタを書くみたいにセリフも一言一句書いて、最初から最後まで丸暗記してから動画を撮るやり方だったんです。

 「自分がやりたいことを楽しんでやっている動画」「日常をそのままお届けする動画」のほうがリスナーさんも喜んでくれるとわかって、少しずつシフトしていきましたね。

――じゃあ今は、自分がやりたいと思ったことをやれているんですね。

 動画版のブログってスタイルで、毎日楽しんで投稿しています。「今日はコンセプトカフェに行きました!」「今日はこういう格好をしてみました!」とか、日記をつける感覚に近いですね。

良い意味で赤ちゃん返りすればいい

――「悔しさを、頑張るエネルギーに変換する」という話も本の中にありましたね。
悔しさを表に出すのが恥ずかしい方も多いと思いますが、自分の感情を恥ずかしがらず表現するには、どうしたらいいでしょうか?

 たとえば子どもの頃って、「嫌なもんは嫌!」って普通に言えてたじゃないですか。悔しかったら「悔しい!」って素直に泣けてた。なのに、大人になった途端にそれができなくなっちゃう。それってなんでなんだろう?って思うんです。子どもみたいに、素直さを爆発させるような生き方でもいいんじゃないかな?って。

 嫌な女にマウントを取られたりした時も、「嫌だな」って心の中で思いはするけど、わざわざ口に出したりしないじゃないですか。大人なんだし我慢しようって押し込めちゃう。でも子どもは素直に「ええ~、そんな風に言われたら悲しい!」って言えちゃうんですよね。良い意味で赤ちゃん返りしたほうがいいなって思います、大人も。

 別に難しいことじゃないはずなんです。だって昔は言えてたんだから。思ったことを本人に伝えるって、本来は悪いことじゃないですしね。

――どうして大人になるにつれて、言いたいことが言えなくなってしまうんでしょう?

 やっぱり「悪く思われたくない」って気持ちが強くなっちゃうのかなあ。

 元々私も気を遣うタイプだったんですけど、自分で勝手にストレスためて影で愚痴っちゃうよりは、マウントを張られた本人に「そんなこと言わないで~悲しいから~」って直接言っちゃったほうが楽だなって思うようになりました。そのほうが結果的に「あの人は裏表のない正直な人」って思ってもらえることが多い気がします。

友人の長所を見つけて参考にするコツ

――信頼できる友人からたくさんのことを学んだというエピソードも、興味深く読みました。人の短所ではなく長所を見つけて参考にするコツはありますか?

 短所は長所ってよく言うじゃないですか。最初は「なんだコイツ、変な奴だな」って思っても、一周まわったら「かわいい奴だな」って思える。一見短所に見える部分でも、ムリヤリ裏返したらその人の長所でもあるんですよね。

――突き抜ければ長所になるって見方を、こちら側からしてあげるってことですね。

 人に対して抱くマイナスな感情って、感じれば感じるほど理由があるんです。そこをちゃんと時間をかけて深堀りしてあげると、すごく面白いですよ。他の人と違うからこそ、パッと見は「ん?」って思っちゃう部分が目立って見えるわけだから。それってめちゃくちゃ浮き立つ、その人だけの個性ってことですよね。

 突き抜けたら美点になるものなんですよね、やっぱり。短所を長所にまるっと「置き換えダイエット」するみたいな!人の見え方がガラッと変わるので、人のネガティブな部分に目がいっちゃう……って方にはとくにおすすめですね。

自分を発揮できる場所に出会う方法

――芸人時代を経て現在YouTuberとして活躍されているエミリンさんだからこそ、自分の力を発揮できる場所に出会う大切さをご存知かと思います。なかなか自分に合った場所に出会えない方は、何から始めたらいいと思いますか?

 私自身YouTubeという場所に出会えたのが24歳の頃なので、人生を俯瞰して見た時にまだ「ここだ!」って思える場所に出会った経験って、一度しかないんですよね。

 今の私が言えることがあるとしたら、「自分に合った場所に出会う」ってまさに恋愛と一緒だってこと。理屈じゃないというか。とりあえず自分が心から好きだと思えることを見つけて、やってみるしかないんじゃないかなって思います。

――やってみないと見えてこないこともありますよね。

 とりあえず、何でもいいから手を出してみる。嫌だと思ったらやめればいいし、楽しいと思ったら続ければいい。あまり気負い過ぎずに、気楽に考えたほうが出会える可能性が高いと思います。

 「彼氏ほしいほしいほしい!」と思い続けてたらいつまでもできないけど、「いつか出会えたら嬉しいな~」くらいの軽い気持ちでいたら上手くいくことが多いじゃないですか、恋愛も。「やりたい」「楽しい」「好きだ」と思えることは全部やっていく!そんな風にフットワーク軽い気持ちを忘れなければ、いつか出会えるはずです。信じて行動あるのみですね。