ドイツの国立ベルリン・エジプト博物館が所蔵する、古代エジプトのえりすぐりの名品約130点が出品された「古代エジプト展 天地創造の神話」(朝日新聞社など主催)が東京・両国の江戸東京博物館で開催中だ。監修した近藤二郎・早稲田大学教授(エジプト学)に見どころなどをきいた。
近藤さんによると、今回の展覧会は3部構成。「天地創造と神々の世界」「死後の審判」など、主に、古代エジプトの精神世界を紹介している。
古代エジプトの神々の特徴は「八百万(やおよろず)の神々」がいることだ。「古代エジプト人は彼らを取り巻く様々なものに神性を感じ、多くの神々を崇拝した。力強いライオン、ナイル川のいたるところにいたワニ、狂暴なカバ。人間を死に至らしめる毒蛇のコブラやサソリも神でした。人間にはない力、特に空を飛ぶ鳥は多くの種類が古代エジプトでは神だったのです」と近藤さん。展覧会ではライオンの女神で、のちに猫として表現される「バステト女神座像」などを見ることができる。
最大の信仰対象だったのが太陽だ。「古代エジプト人は、死後に再生して永遠の生命を得られるよう願っていた。夕方に西の地平線に没して死んだ太陽が、翌朝、沈んだのと逆の東の地平線に再生するさまは、彼らにとって確実な再生のシンボルでした」と近藤さんは語る。
動物の糞(ふん)を球形に丸めて運ぶスカラベ(タマオシコガネ)は太陽神として崇(あが)められた。そのことは、会場の「太陽の船に乗るスカラベを描いたパネヘシのペクトラル(胸飾り)」などからもうかがえる。
古代エジプト人は死後の世界を信じていた。「人は誰でも死ぬとオシリス神となり、死後に再生・復活して永遠なる生命を得ると考えていた」と近藤さん。そのオシリス神のもとでの再生を祈って作られたのがミイラである。展示ではミイラに被(かぶ)せた「デモティックの銘文のあるパレメチュシグのミイラ・マスク」などの品々が鑑賞できる。
来年4月4日まで。来年1月4日、11日、18日を除く月曜と、12月21日~来年1月1日、12日休み。
(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2020年12月9日掲載