イケメン俳優沼に落ちた原体験
――横川さんがいわゆる”イケメン俳優沼”に落ちたきっかけについて教えてください。
人生で初めて観たドラマはおそらく、安田成美さんと吉田栄作さんが主演を務めていた1990年放送の月9「キモチいい恋したい!」だと思うんですが。はっきりと「推し」と言える存在ができたのは1995年放送の「For You」ですね。あのドラマで香取慎吾さんに激ハマりしたのを、今でもよく覚えています。
――本書にも書かれていましたね! 香取さんがイメージキャラクターをしていた某飲料を機会があれば買っていた、というエピソードまで、興味深く読みました。横川さんはライターとしてはもちろん、イケメン俳優オタクとしてたくさんのコラムやインタビュー記事を書かれていますよね。当時からドラマ一色だったんでしょうか。
ドラマも大好きでしたが、マンガやゲームも大好きでしたね。『姫ちゃんのリボン』を読んだり「ドラクエ」をやったりしていました。僕には姉が2人いるので、どちらかというと少女漫画に触れる機会が多かったと思います。雑誌でいうと「Myojo」「POTATO」「JUNON」などが揃っている環境でした。イケメン俳優の沼に落ちる土台は整っていたといえるかもしれませんね。
――横川さんがイケメン俳優オタクとして広く知られることになったきっかけのひとつである、ドラマ「おっさんずラブ」の熱烈なレビュー記事も印象的でした。
ありがとうございます。あの記事に関しては、思いの丈をそのまましたためて少しの間放置していたら、いつの間にかすごい通知の数になっていたという……。「おっさんずラブ」というドラマも僕の“イケメン俳優オタク熱”に新たな燃料を与えてくれたドラマでしたね。
送られてきたURLはぜんぶ踏め
――「オタク」という言葉や存在が少しずつ市民権を得ているなか、夢中になれるものや没頭できる趣味がない!と悩んでいる人も多いと感じています。横川さんのように「好きなものを見つける方法」を教えてください。
人から勧められたものは必ず見てみることをオススメしたいですね。これはオタクの先輩から教えてもらった言葉なのですが、「送られてきたURLはぜんぶ踏め!」が僕の信条なんですよ。時間がないとか興味が持てないとか、スルーしてしまう理由はさまざまだと思いますが、そこを敢えて踏んでみる。人が面白いと言っているものには、何かしらの「面白い理由」が隠されているものです。自分に合うか・合わないかはさておき、まずは見てみたほうが好きなものに出会える可能性は上がると思います。
――URLが送られてくるということは、何かしらオススメな理由があるということですもんね。
そうそう。だからといって、見たもの全部を好きになる必要はまったくないんですよ。楽しみながらURLを踏んでいるうちに、必ず自分の肌に合うものに出会えますから。自分に合うもの・合わないものは何かを判断する期間を設けるのも大事だと思いますね。
――そもそも、自分がどんなものに惹かれるのか分からない方も多いですからね。それでいうと、横川さんが人からオススメされたものでドハマりしたものってなんですか?
タイドラマ「2gether」ですね。「おっさんずラブ」が好きだったこともあり、友人から「絶対ハマるよ!」とURLが送られてきたのがきっかけです。最初は諸事情からURLを踏むのを躊躇していたんですが、ステイホームで時間が余っていたので試しに踏んでみたら……あっという間にハマってしまいました。やっぱり、URLは踏んでみたほうがいいですよ。
ドラマの最終回にはシャンパンを
――なかなか好きなものに出会えない、没頭できる趣味が見つからない人あるあるで、「途中で飽きちゃう」というパターンも多いですよね。解消するコツってありますか?
「作品に合わせて自分をチューニングする」ことが大事だと思っています。たとえば本格サスペンスを観るモードでラブコメを観てしまうと、そりゃ合わないですよね。「サスペンスは好きだけどラブコメは苦手」という方は、ラブコメを楽しむモードに自分をチューニングしてあげるのが作品を楽しむコツです。
――面白いですね……! それは盲点でした。自分からテンションを合わせにいく、といったイメージでしょうか。
そうですね。たとえば山崎豊子の小説を読むテンションで「2gether」を観ても、なかなかハマれないじゃないですか。ゆるいラブコメを観るなら、「普段はあまり観ないけど、今日はあえてキャッキャウフフしてみる日!」と設定してから観る。最初から特定のジャンルを避けてしまうのはもったいないかな、と思います。
――横川さんが日頃からやっていることで、自分をチューニングするコツってほかにどんなものがありますか?
僕だったら、ドラマの最終回に合わせてシャンパンやケーキを用意するのが鉄板ですかね。仕事から帰ってきたばかりの疲れた自分のままでは、やっぱり作品を楽しみきれないですから。いったんゆっくりお風呂に浸かったり、下ろしたてのパジャマを着たりするといいですよ。自分を整えてから作品に向き合ったほうが、同じセリフでも響き方が変わってくるはずです。
素直になることが「好き」を育てる
――そもそも、自分の「好きなもの」に素直になれない人も多い気がします。
よく分かります。僕自身、「男性なのにイケメン俳優が好きなの?」となんだか変な目で見られる経験が多かったことで、おおっぴらに好きなものをアピールできない時期がありましたから。
――横川さんは、どうやってその心理的ブロックを外したんですか?
まずは、人の目を気にしない! どうして人の目が気になってしまうかというと、気にしてしまう環境に自分を置いているからだと思うんですよね。自分を受け入れてくれるコミュニティに移ることで、ためらいなく自分の好きなものを「好きだ!」と言えるようになるはずです。
今はインターネットやSNSが普及していますから、ネット上のコミュニティを探すのもひとつの手ですよね。今いる環境がすべてじゃないですから。堂々と自分の好きなものをアピールできるコミュニティは、必ずあると思いますよ。
――今いる環境でどうにかしようとするのではなく、受け入れてくれる環境を探しに行くってことですね。
好きを育てる観点からいうと、「作品そのものを加点方式で観る」のも大切です。あら探しをしながら観てしまうと、どうしても作品を好きになれないですから。ひとつひとつ「ここの演技がいいな」「台詞がステキだな」といいところを見つけながら観ると、好きの加速度が上がっていきます。
そして「好き!」「いい!」と思ったことはどんどん周りにシェアしていく。雑談でもいいし、SNSで発信するのでもいい。そうすると、「これオススメだよ!」と友人から送られてくるURLの数が増えてくるんですよ。「好き」をシェアすることで、また「好き」が生まれ育っていく。良い循環がまわっていくんですよね。