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ヒーロー雑誌が苦境 男の子なら通る道、じゃなくなった

テレビマガジンの2021年3月号。表紙には来月始まる「機界戦隊ゼンカイジャー」や付録が大きく扱われている=講談社提供

 特撮ヒーローとともに歩んできた、子ども向けのテレビ雑誌が苦境に直面している。今年で創刊50年を迎える老舗雑誌「テレビマガジン」(講談社)の部数は全盛期の10分の1。世代を超えたファン層の開拓へ、取り上げるテーマの幅を広げるといった試みも始まっている。

 テレビマガジンやライバル誌「てれびくん」(小学館)は、主に未就学の男児向けの月刊誌。特撮ヒーローのカラーグラビアや特集記事がコンテンツの中心だ。ヒーローが身につけるベルトや武器などを作れる付録がつくことも多い。

 テレビマガジンが創刊した1971年は、仮面ライダーのテレビ放映が始まった年。ブームに乗って部数を伸ばし、「仮面ライダーV3」が放映されていた73年には発行部数が66万部でピークに達した。

 競合誌が林立した時代もあったが、84年に秋田書店の「TVアニメマガジン」が、徳間書店の「テレビランド」が97年に休刊。残るのは、テレビマガジン以外では「秘密戦隊ゴレンジャー」ブームの76年に創刊したてれびくんだけだ。

 当初の購読層は小学生。カラーグラビアは少なく、「天才バカボン」「ムーミン」などの漫画が多くを占めた。「講談社で一番優秀な編集者が集まるのは『テレマガ』」と言われ、編集部には学校帰りの子どもたちが立ち寄り、誌面に意見を言ったり校閲を手伝ったりしていたという。その後、特撮番組の視聴者の低年齢化とともに漫画が減り、グラビアが多くを占める今の形になった。

 ただ、「運命共同体」ともいうべき特撮番組の視聴率は、少子化とともに低迷していった。

 ビデオリサーチによると、シリーズ第1作の「仮面ライダー」の最高視聴率は30・1%だったが、現在放映されている「仮面ライダーセイバー」は4・3%。「スーパー戦隊」ものも同様の傾向で、75年に放映が始まった「秘密戦隊ゴレンジャー」の最高視聴率が22・3%だったのに対し、最新作「魔進戦隊キラメイジャー」は4・4%(視聴率はいずれも関東地区)だ。

 視聴率の低下は部数減に直結した。テレビマガジンはここ数年5万~7万部で推移し、てれびくんもピークの半分以下の20万部弱だ。

かっこよすぎるヒーローは不人気?

 ヒーロー雑誌は衰退する一方なのだろうか。

 テレビマガジンの岡本朋子編集長は「存在はまだまだ大きいが、戦隊やライダーがかつてのように『男の子なら必ず通る道』ではなくなっている」と分析する。

 出版不況の中でも「おしりたんてい」といった児童書は人気だが、雑誌に追い風は吹いていない。岡本編集長は「知育ドリルを過去に載せたこともあったが、ヒーローがかっこよすぎるせいか、反応がいまいちだった」。

 昨年からはテレビ番組以外にユーチューブチャンネルを取り上げる記事を増やし始めた。特撮の過去作品も含め、紹介するキャラクターの幅も広げる。深掘りしたいテーマのニーズには6年前に始めたムックシリーズで応える。売り上げは好調だという。

(杉浦幹治)朝日新聞デジタル2021年02月15日掲載

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