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河合隼雄物語賞に寺地はるなさん『水を縫う』、学芸賞に石山徳子さん『「犠牲区域」のアメリカ 核開発と先住民族』

河合隼雄学芸賞を受けた石山徳子さん(左)と、物語賞を受けた寺地はるなさん=2日、京都市中京区

「分かりやすいものに抵抗」河合隼雄物語賞・寺地さん

 『水を縫う』は裁縫の好きな男子高校生が、姉のためのウェディングドレスを仕立てる物語。選考委員の小川洋子さんは「平凡な家族の成長を描いているようで、平凡とは何かを突きつけてくる」と評した。

 寺地さんは「物語は、性別、職業といった『ラベル』に書けないことを語るためにある。分かりやすいものには大きな力があるが、抵抗していきたい」と話した。

「驚きと学び、葛藤の連続」学芸賞・石山さん

 石山さんの受賞作は、アメリカの核開発の拠点とされた先住民居留地を調査した研究書。「セトラー・コロニアリズム(定住型植民地主義)」という概念を用いて、差別と抵抗の歴史に迫った。選考委員の中沢新一さんは「イスラエルとパレスチナの問題にも通じる。シリアスで大きな問題提起だ」と評価した。

 石山さんは「私にとって現場は驚きと学び、葛藤の連続」と、さらなる研究への意欲を語った。(上原佳久)=朝日新聞2021年7月21日掲載