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仕事に自信がない人へ 田村麻美さんが「『フツーな私』でも仕事ができるようになる34の方法」教えます

田村麻美さん(写真/洞澤佐智子)

「メジャー」がダメなら「ニッチ」で勝負する

 頑張っているけれど、なかなか仕事の芽が出ない……そんなあなたが勝負している場所は、競争者であふれる血みどろの「レッドオーシャン」ではなかろうか。私は本書で「評価されないときは、思い切って市場(会社や環境)を変えてみよう」と提案しているが、「メジャーではなく、あえてニッチなところで勝負する」というのも、ひとつの方法である。

 私の税理士事務所は東京・足立区にある。なぜ足立区で開業したか? それは足立区が税理士業界においての「ブルーオーシャン」だと当時、私は考えたからだ。

 東京で税理士事務所を開業する、というと思い浮かぶエリアは千代田区や港区。しかし、私はそんなに競争者が多い地域で開業する気はさらさらなかった。ブランドエリアで開業するエリート税理士たちに、太刀打ちできるような自信ももちろんなかった。

 当時から足立区に住んでいたのだが、試しに「足立区 税理士」で検索してみたところ、とても少ない。「足立区 女性税理士」で検索すると、さらに数が減った。しかも、足立区にはいわゆる大企業は少ないが、私がクライアントとして思い描いていた中小企業や商店はたくさんある。「ここだ」と確信した。

 開業して1年後に出産。子どもが保育園に入り、そろそろ本腰を入れて集客したいと思い、事務所のホームページを作ることにした。

 サイトトップに打ち出したキャッチフレーズは、ズバリ「足立区の気さくな女性税理士」。税理士事務所のサイトはどこも同じようなものが多いのだけれど(真面目な表情の写真とプロフィール、料金表)、笑顔でポージングした写真を大きく使ってレイアウトし、文章もノリが良く面白いものを自分で書いた。一般的な「税理士像」とはかけ離れたものだったが、結果として、このホームページが新規の顧客を集めることにつながった。(税理士法人化したため、現在このサイトは閉鎖)

 集客に貢献したのももちろんだが、顧客とのミスマッチを防げたのも、よかったことのひとつだ。このホームページを見て、問い合わせをくれるのは、ノリが良くてコミュニケーション力のあるクライアントが多かった。「こんなホームページの事務所は信用できない」「キャリアがある税理士にお願いしたい」という人は、絶対に連絡してこないのである。一見、ふざけたホームページは、私がターゲットとする中小企業や個人のお客さんと出会える格好の窓口となった。

「メジャー」で結果が出ないときは「ニッチ」で勝負。仕事の内容ややり方、どんなことでもいい。成果が出せそうな、あなたにとっての「ニッチ」は何か、一度考えてみよう。

【今日からできるTO DO】
▶仕事に関わる「得意」と「不得意」を、一度ノートに書き出してみる
▶「得意」のなかでも、皆ができる「メジャー」なことではなく、
「ニッチ」なことが自分の個性であり、強みになると心得る

「『個性』は評価されてから小出しにする」より。20代の頃は周りに合わせてコンサバOL風を装っていたという田村さん。現在は仕事にも自信がつき、「自分が好きな服を心置きなく着ることができるようになった」という(左の写真は洞澤佐智子さん撮影)

「頭を空っぽにする」ルーティンをつくる

 仕事のストレスがたまってくるとイライラ。プライベートでの嫌なことも引きずりがち。そんなとき、つい上司や同僚に無愛想な対応をしたり、仕事が雑になったり。人間だもの、仕方ない……と言ってあげたいところだけれど、その職場での「不機嫌」な態度は、あなたの価値を大きく下げている!

 そもそも、「自分の機嫌は自分で取る」のが社会人の基本。OFFでは心のおもむくままに怒ったり泣いたりして、自分をさらけ出してもいいけれど、ONではきっちり切り替えておきたい。いつも口角が上がっているようなイメージで、機嫌良く仕事をしていたいものだ。

 ONとOFFをうまく切り替えるためには、何か「仕事を始める前のルーティン」を決めておくといいかもしれない。とっておきのチョコを1粒食べる、コーヒーを1杯飲む、簡単な体操やストレッチ……なんだっていい。そのとき、「雑念を極力払って、頭を空っぽにしておく」ことがポイント。自分なりの儀式で区切りをつけることで、「よしっ!」と前向きに仕事する準備ができるはずだ。

 私の場合、昔は「1本のたばこ」だった仕事前のルーティンが、今はぐっと健康的に「早朝ランニング」へと変わった。週に3回くらい、朝5時半から1時間、自分のペースでゆっくりと走る。

 1年前から始めたこのランニング、最初は「早朝に走ったりすると、その後疲れて仕事にならないかも」と思っていた。ところが、とにかく無心に汗をかいて心も体もスッキリした状態で、1 日の仕事をスタートできるのがいい。達成感もあり、体力がついて寝つきもよくなるなど、「いいことずくめ」なのだ。

 自分の機嫌をできるだけ安定させるための、あなたなりの「前向きになれるルーティン」。自分に合ったやり方がきっとあるはずなので、ぜひ試してみてほしい。

【今日からできるTO DO】
▶職場でのイライラは自分の価値を下げる。「自分の機嫌は自分で取る」ことを心得ておく
▶「仕事をスタートする前のルーティン」を決めておき、ONとOFFの区切りを付ける

「人柄の良さ」で勝負する

 「頑張っているのに、なんで私は評価されないのか」問題。自分なりに努力はしているが評価されない、スキルアップに励むのはこれ以上しんどい……というあなた。この際、方向性を変えて、徹底的に「人柄の良さで勝負する」という戦略に切り替えるといいかもしれない。

 私は職場において、「感じの良さ」は、スキルのひとつだと思っている。だって、仕事を一緒にする同僚たちはロボットじゃない、人間だ。上司だって、無愛想な部下よりも、いつもニコニコしている部下のほうが、仕事を頼みやすいだろう。

 ちなみに、アメリカでは、「仕事はめちゃくちゃデキるけれど、職場に波風を立てるイヤなやつ」のことを〝ブリリアント・ジャーク〟と呼ぶそうだ。能力主義的なアメリカでさえこういう評価なのだから、いわんや職場の和を尊ぶ日本においてをや。

 直属の上司をバカにしたり、悪口を言ったりしないことも、当たり前だけれど大事なことだ。いやいや、分かりますよ、同僚と一緒に「○○課長、ムカつく〜!」とぶっちゃけたくなる気持ち。「陰でこっそりと言っているから大丈夫」と感じるかもしれないが、そういう雰囲気は普段の対応にもにじみ出ると思ったほうがいい。

 都内の税理士事務所に勤めていた頃、能力にイマイチ自信のなかった私は、意識して「職場の潤滑油」となるよう、心がけていた。上司が「飲みに行くぞ〜」と誘ってくれたら、「行きます!」と即答だ。時代錯誤? そうかもしれない。でも、単純に「慕ってくれる部下」って、上司にとって信用できる存在だと思うのだ。

 振り返れば、仕事のできない、調子のいいだけの新人だった。うまくいったことといえば、「飲み会要員」としての立場は確立されていたので、昼間仕事ができなくても無視をされなかった……ということぐらいだろうか。仕事もできず、愛想もない新人であれば、存在意義が1ミリもないので無視されてもおかしくなかったであろう。

「飲み会要員」などという言葉は、おそらく令和の今では時代錯誤なのだろう。しかし、仕事ができなかったら本来お給料はいただけないものである。お給料をいただくためには、「仕事ができる」ことが第一であるが、それが難しいのであれば、会社で「どんな手を使っても、居座っていられる立ち位置」を、自らつくっていくしかないのである。力説するのもむなしい、情けない話ではあるが。

 しかし、そんな努力をした会社も、結局退職することになる。昇進は難しいとしても、数年は勤め続けることはできただろうが、さすがに常識もあったので、仕事ができないことに負い目を感じて、退職を申し出たのである。

 結論としては、飲み会にしても普段の職場でも、「声を掛けやすい」ことが大事。能力だけでなく、人柄やコミュニケーション力が仕事のチャンスにつながることだってある。無理してデキる人オーラを出さなくても、大丈夫。今日からはあなたの「人柄の良さ」も、強みにしていこう。

【今日からできるTO DO】
▶スキルに自信がないなら「感じの良さ」「コミュニケーション力」も武器にする
▶声の掛けやすさや、フットワークの軽さを普段から意識して行動する