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瀬戸内寂聴さん死去 99歳、作家・僧侶 文化勲章受章者

自宅でもある寂庵の庭に立つ瀬戸内寂聴さん=2016年4月、京都市右京区

 近現代の新しい女性の生き方を描いた小説で人気を集め、反戦・平和を訴える社会活動にも精力的だった作家で僧侶、文化勲章受章者の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが9日、心不全で死去した。99歳だった。

 徳島市生まれ。名は「晴美(はるみ)」と名付けられた。東京女子大在学中に結婚し、卒業後は夫の勤務先だった北京にわたるが、敗戦で1946年に帰国。夫のかつての教え子と恋に落ち、幼い一人娘を残して京都へ。その後離婚し、少女小説や童話を書きながら、丹羽文雄主宰の同人誌「文学者」に加わった。

 文芸誌「新潮」に掲載された「女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)」で57年に新潮社同人雑誌賞を受賞。これを皮切りに、61年には評伝「田村俊子」で第1回田村俊子賞、63年には離婚の原因になった自身の恋愛を描いた「夏の終(おわ)り」で女流文学賞を受賞した。以後は岡本かの子、伊藤野枝(のえ)の伝記小説「かの子撩乱(りょうらん)」「美は乱調にあり」や、自我に目覚めた現代女性の生と性をみつめた長編小説を次々と発表し、人気作家になった。

 51歳だった73年、岩手県平泉町にある中尊寺で得度した。翌年には京都・嵯峨野に寂庵(じゃくあん)を開き、晩年まで続けた法話の会には全国から多くの人々が訪れた。87年からは岩手県二戸(にのへ)市の天台寺住職を務めた。

 その後も、92年に「花に問え」で谷崎潤一郎賞、96年に「白道(びゃくどう)」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。「源氏物語」の現代語訳(全10巻)にも取り組み、完結後の2000年に日本文芸大賞を受けた。01年には「場所」で野間文芸賞を受けた。

 06年に文化勲章を受章。08年に安吾賞、11年に「風景」で泉鏡花文学賞を受けた。90歳を過ぎても執筆活動は衰えず、14年には自身の人生の終着点を見つめる「死に支度」、17年には最後の長編小説とした「いのち」を出した。

朝日新聞デジタル2021年11月11日掲載

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