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藤本四郎さんの絵本「ねずみのえんそく もぐらのえんそく」 地面の下はどうなってる?

文:坂田未希子

地上と地下の世界を対比

――いいお天気のある日、ねずみ園の子どもたちと、もぐら園の子どもたちが遠足に出発します。出かけた先は……。地上のねずみと、地下のもぐらの楽しい遠足風景を描いた藤本四郎さんの『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』(ひさかたチャイルド)。画面の上下で話が同時進行していく設定が面白い作品だ。

 「チャイルドブック」(チャイルド本社)という月刊保育絵本で、文字がない3つの場面を見ながら、家族や友だちとお話を想像するというコーナーに絵を描いたのがきっかけでした。担当者から、秋の刊行に合わせて「芋掘り」をテーマに、人間の幼稚園ともぐらの幼稚園のお話を、という提案でした。描いたのは、人間ともぐらの子どもたちが芋掘りに出かけて、子どもたちが芋づるを引っ張ったらもぐらも出てくる、というお話の3場面。描いた後、もう少しアレンジして内容を膨らませたら絵本になるんじゃないかなと、僕の方から提案しました。

――絵本にするため、3場面から表紙も合わせて14場面を制作。主人公も、人間からねずみに変えることに。

 どうやって展開させていくか、ページをめくるたびにドラマがあるようにするにはどうすればいいか考えて、地上と地下の場面を対比させることにしました。地上のねずみが「ぽん!」と蹴ったドングリが、穴から地下に落ちてもぐらの頭に当たったり、地上では草のツルでブランコをしている時に、地下では木の根っこでブランコをしていたり。ほかにも、道の先には何があるのかとページをめくりたくなるような仕掛けや、迷路の要素を入れるなど、途中で飽きられないように、面白く見せるために工夫しました。

『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』(ひさかたチャイルド)より

 息子が小さい頃、隣の家に息子と同じ歳の男の子がいて、いつも一緒に遊んでいたのですが、ある時、うちの庭と隣の庭をつなごうとふたりで庭に穴を掘り出したんです。実際につなぐことはできませんでしたが、こんなに掘って大丈夫かなっていうぐらい掘って(笑)。土を掘っていく楽しさとか、地面の下はどうなっているんだろうとか、そういうところも含めて、子どもたちが作品を楽しんでくれればと思っています。

――ねずみにしたのは、子どもたちになじみのあるキャラクターだからと藤本さんはいう。

 昔から、日本だけでなく海外のお話にもねずみが出てくるものが多いのは、それだけねずみが身近な存在だったからでしょうね。キャラクターにすると、とてもかわいいですし。もぐらも、実際に出会うことはなくても土が盛り上がっているところはよく見かけるので、身近な動物といえます。僕はチェコの絵本『もぐらとずぼん』(福音館書店)が好きなんですが、もぐらのほのぼのしている風貌がかわいらしくて、どこか親しみを感じます。ねずみともぐらは、大きさもおなじくらいなので、上下で対比させるのにもちょうどいいなと思ったんです。

『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』(ひさかたチャイルド)より

アニメの美術担当から絵本作家へ

――絵本の仕事をする前は、アニメーションに携わっていた藤本さん。テレビアニメ「悟空の大冒険」の美術、「まんが日本昔ばなし」では、記念すべき第1話となった「笠地蔵」をはじめ、多くの作品の演出を手がけた。

 毎日放送映画という会社で、PR映画とかCMの背景画を描く仕事をしていたところ、友人から手塚治虫さんの虫プロダクションに来ないかと誘われて、アニメーションの世界に入りました。小学生の頃、よく手塚さんの漫画をまねて描いていましたが、まさか自分がそこで働くとは。「悟空の大冒険」などの美術を担当していましたが、とにかく忙しくて大変でした。

 その後に制作した「まんが日本昔ばなし」は、連続ものと違って1話が10分40秒で完結するというのが魅力でもありました。昔話なのでドラマは成立している。それをいかに見せるか、演出するかがポイント。アニメなのに絵が動かない、カメラワークだけで見せる手法など、毎回、新しいことにチャレンジしていました。クリエイティブなことができる喜びがあって、みんな楽しんで作っていましたね。

 でも、子どもの頃から絵を描くことが好きで、ずっと絵本を描きたいと思っていました。絵本はページをめくる瞬間も空想することができる。ページを戻ったり、何度も自由に繰り返し読むことができる。手でめくるという触覚も好きです。いつか絵本の仕事をしたいと思って、アニメの絵コンテを描きながらイラストを描くようになり、挿絵の依頼がくるようになりました。

 アニメの経験はすごく絵本に生かされています。主人公たちのキャラクターづくりには、「まんが日本昔ばなし」で数多く手がけたキャラクターデザインの経験が生きていますし、『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』の地上と地下で話が進んでいくところも、アニメ的発想かもしれませんね。

――今も、絵本の世界に刺激を受けるという藤本さん。

 僕の絵本はただただ楽しいってものに過ぎないけれど、心が温かくなるものや、身につまされるものもある。いい絵本を読むと、こういうのを作りたいなと思うけど、自分には話を組み立てる能力があまりないので、なかなか難しい(笑)。

 それでも、数年前に嬉しいことが。汐文社の編集部から仕事の依頼があったのですが、担当編集者の門脇大さんは、僕が40年近く前に絵を描いた児童図書の読者だったんです。『へんしん!スグナクマン』(草炎社)といういじめをテーマにした作品で、彼もいじめを受けた経験があったそうです。本を読んで、自分もこういう本を作る仕事がしたいと編集者になり、僕のところへ。一緒に『ぼくたちのおばけ沼「ひとりぼっち」の友情物語』という本を出しました。絵本や本の持つ力を感じましたね。

 絵本を読んで、世の中ってそんなに悪いものではないよって感じてもらえるいいですね。読んだ人が自分の想像力を刺激されて、なにかを創作するようなことに発展するとうれしいです。