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竹良実「バトルグラウンドワーカーズ」 ロボット操縦、命がけの「戦争労働」

『バトルグラウンドワーカーズ』全8巻 竹良実著(小学館)

 竹良実(たけよしみのる)というマンガ家をご存じですか? 私は尊敬する秋本治さんから『バトルグラウンドワーカーズ』という作品を教えて頂き、感嘆しました。

 人型ロボットが戦う「機動戦士ガンダム」や「新世紀エヴァンゲリオン」と同工異曲の設定で始まりますが、意外な展開でどんどん深みを見せ、この12月、ついに完結しました。今年の日本マンガの大きな収穫です。

 舞台は近未来。「亞害体」と呼ばれる未知の生命体が地球を襲来して人間を殺害するので、人間たちは「人類連合」という組織を作って、亞害体と戦っています。

 亞害体が主に出現する地域は、南沙諸島周辺に限られており、人類連合の兵士たちはそこで死闘をくり広げますが、それ以外の人類はごく普通の日常生活を送っています。人類連合の兵士たちは、命をかけてほかの人間のために戦う縁の下の労働者なのです。

 主人公の青年・平仁一郎(たいらじんいちろう)は、失業中だったことからこの戦争という労働に応募します。まずは、その労働者たちの仕事にたいする感情を描くリアリティーに打たれます。こんな生々しさをもった戦争マンガは初めてでしょう。

 戦闘のための兵器は、「RIZE(ライズ)」という人型ロボット。ただし、なかに人が入って操作するのではなく、遠隔地にいる人間と神経接続され、その意思にしたがって動きます。RIZEが被害をこうむると、操縦者はそれに応じた苦痛を味わいますが、肉体を損傷されることはなく、RIZEの背中にある神経接続の通信機を破壊されないかぎり、死ぬことはありません。

 また、通信機が破壊される直前に神経接続を切断すれば、操縦者の意識は遠隔地の肉体に戻ることができます。しかし、この「強制遮断」は脳への負担が大きく、生涯5回しか行うことができません。この限度をこえれば、操縦者は死亡してしまいます。

 ここに、マンガ解説者の南信長さんは、ほかの人々の生活のために働きながら、何シーベルト以上被曝(ひばく)すると命が危険にさらされるという原発での労働との類似性を見ています。慧眼(けいがん)です。

 戦争という労働の現実と、亞害体との戦闘アクションの迫力に引っぱられてぐんぐん読み進めますが、その戦争の裏にあるからくりが明るみに出て、話は一挙に高度な国際政治の問題へと及んでいきます。大国の思惑に抑圧される少数民族の悲劇です。

 死をともにする兵士たちの友情と連帯の物語としても秀逸ですし、全8巻、ダレ場のない緊密な構成も賞讃(しょうさん)に値します。=朝日新聞2021年12月8日掲載