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くらもちふさこ展が開幕!「いつもポケットにショパン」「天然コケッコー」「花に染む」など名作原画にときめいて

言葉に頼らない繊細な心理描写と映像的な画面構成

 くらもちふさこさんは、1972年『別冊マーガレット』(集英社)10月号掲載の「メガネちゃんのひとりごと」で高校在学中にデビュー。1977年からは『別冊マーガレット』の表紙を単独で飾るようになり、『別マ』の看板作家として人気を博しました。「いつもポケットにショパン」をはじめ、「東京のカサノバ」「A-Girl」「海の天辺」などのヒット作を続出。その後、活躍の場を『コーラス』や『ココハナ』(ともに集英社)に移し、「天然コケッコー」や「花に染む」などの代表作を世に送り出してきました。まさに、少女マンガの最前線を走り続けるマンガ家の一人です。

 本展は大きく分けて、1階の展示室では1970〜80年代の『別冊マーガレット』時代の作品、2階の展示室では『コーラス』『ココハナ』時代の1990年代以降の作品を中心にカラー原画や生原稿などの資料が並びます。

1階展示室の一角には、テレホンカードなど『別冊マーガレット』のくらもち作品懸賞グッズを紹介するコーナーも!

 「画面構成やコマ割りなど、これまでの少女マンガ家とは異なる、芸術性を強く感じるマンガ家さん」と、本展担当の外舘(とだて)恵子学芸員。くらもち作品は、言葉やセリフに頼らずに、コマ割りや構図などに細かい工夫も施して登場人物たちの心を描き出します。生原稿を見ていると、くらもちさんの目には映像的なものが浮かんでいたに違いないと思わずにはいられません。

時代とともに変化する画風と画材

 作品を時系列に辿ることで、画風の変遷が楽しめるのも本展の醍醐味の一つです。面白いのが、同じ作品でも文庫や新装版としてリブートされる際に表紙絵が新たな画風でアップデートされているところ。過去の作品のキャラクターたちが連載当時とは異なるタッチで描かれているのは、かなり新鮮です。本展では作品ごとに生原稿やカラー原画が並んでいるので、絵柄が違うなと思ったらキャプションをぜひチェックしてみてください。

こちらは2003年に刊行された「いつもポケットにショパン」のクイーンズコミックスプレミアム版のカバーイラスト。マーガレットコミックスの連載当時の絵柄と比べると違いは一目瞭然です

 くらもちさん本人によるコメント「KURA VOICE」や展示作品のキャプションを注意深く見ていると、画風の変化は画材の変化にもつながっていることが確認できます。初期の水彩に加えてカラーインクが登場し、コピックへと、主に使う画材も移り変わっているのです。

初期代表作の「いつもポケットにショパン」の頃は、水彩とカラーインクを併用することも

「チープスリル」の頃は、カラーインクの時代

水彩画のように見える「天然コケッコー」ではコピックを駆使

 くらもちさん自身も、本展に寄せたメッセージで「50年間の活動の一環はツール旅と言っても過言ではありません」と綴っています。作品はもちろん、生原稿や原画を通して改めて見えてきたのは、マンガ家として常に新しい表現方法を求めて進化し続けている姿でした。

カラー原画は4期に分けて総入れ替え

 会場に並ぶカラー原画は全部で80点ほど。展示構成に変わりはないものの、カラー原画は作品保護のために会期ごとに総入れ替えされます。会期は次のとおり。

Ⅰ期/1月29日(土)~2月27日(日)
Ⅱ期/3月 2日(水)~3月27日(日)
Ⅲ期/3月30日(水)~4月24日(日)
Ⅳ期/4月27日(水)~5月29日(日)

 I期展示作品の中で外舘学芸員がぜひ見てほしいというイチオシが、チラシやポスターにもなっている「東京のカサノバ」の扉絵のカラー原画です。

(左)「東京のカサノバ」『別冊マーガレット』(集英社)1984年2月号 扉 ※本作の展示は2月27日まで

 こちらの赤の表現にご注目を。本人コメント「KURA VOICE」によれば、背景はちょっと沈んだポスターカラーの赤を用いて、自信を持って塗ったとのこと。ハートのクッションに使ったカラーインクの明るい赤とは表情が違うから組み合わせられたとも語っています。色の濃淡で色味や表情を変化させることを実践し始めた時期なんだとか。こんな制作当時の裏話とともに作品が楽しめるのも本展ならではです。

かわいいグッズに胸キュン♡

 展覧会に来たら記念に立ち寄りたいのがミュージアムショップ。各種ポストカードをはじめ、「海の天辺」の手ぬぐい、「A-Girl」のクリアファイル、トートバッグにマスキングテープなどなど、思わず大人買いしたくなってしまうほど、かわいいグッズが揃っています。ミュージアムショップでの支払いは現金のみなので、行かれる方は用意を忘れずに!

 遠方で展覧会に行けない、何度も行けないという方には、書店でも購入可能な『THE くらもちふさこ デビュー50周年記念画集』(集英社)がおすすめです。本展担当の外舘学芸員も編集に参加し、くらもち作品の大ファンだというブックデザイナーの名久井直子さんが装丁と本文デザインを担当しています。こだわりのインクで印刷された美しいカラーイラストが満載で、本展がギュッと凝縮されたかのような一冊。展覧会の余韻に浸るにも、うってつけです。

 展示替えの度に足を運びたくなる「くらもちふさこ展」。そして、展覧会を見ると読みたくなるくらもち作品。この無限ループを覚悟で、2022年前半は“くらもちワールド”にどっぷり浸かってみてはいかが?

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