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大日本印刷が開発して技術を使った「速読日本史」

 「本は読みたいけれど、時間が取れない」という忙しい現代人の需要に応えて、速読術の本が巷(ちまた)にあふれる昨今。4月末に発売された『2倍速で読めて、忘れない 速読日本史』(金谷俊一郎著、宇都出雅巳監修)は、ひと味もふた味も違う。速読術を教えるのではない。「速く読めてしまう」レイアウトになっているのだ。  本書を開くとびっくりする。横書きの文字は1行ごとに右にずれていき、その文字列は右肩下がり。実はこれ、大日本印刷が何年も前から真面目に開発してきた技術だ。

 文字を読むとき、人間の視点がどう動くかを研究してきた。行きつ戻りつする視点の移動を減らすことで、スムーズに読み進められ、時間短縮につながるという。同社によると、1分間に読めるのは通常400~600文字。ところがこの技術を使えば、最大1千文字程度まで読めるようになるという。これまで電子書籍などで実証実験を重ねてきたが、紙の本になるのは初めて。ワニブックス新書編集部の内田克弥さん(40)は、「社内でも盛り上がった企画。大人の学び直し、学生の勉強、両方に役立つ本です」と話す。

 弥生から現代までを記述した500ページ(約24万字)が最短4時間で読める計算だ。達成感と共に、読むって何だろう、と考えてみたくなる。(興野優平)=朝日新聞2022年5月7日掲載