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ワクワク、真夏の冒険 「ブラックホールって なんだろう?」ほか子どもにオススメの8冊 

絵本評論家・作家 広松由希子さんのオススメ

 「ブラックホールって なんだろう?」(福音館書店) 親しく語りかける文と絵で、謎の天体ブラックホールを楽しく解いていく。近づくと「スパゲッティのよう」に細く引き伸ばされて吸い込まれるって。「げっぷのよう」に吐き出すガスから星が生まれるって本当? 身近な例から想像を広げ、宇宙の彼方(かなた)へと連れ出してくれる。実はブラックホールは、地球や太陽、天の川銀河をつくった「陰の立役者」かも? まだ答えの出ない、尽きない謎に胸がふくらむ=小学校中学年から(嶺重慎文、倉部今日子絵、1430円)

 「かにこちゃん」(くもん出版) 夜明けから夕暮れまで、ページごとに移ろう海と空の色を背景に、パッと目を引く赤。愛敬たっぷり、かにこちゃん。波と戯れ「しゃぷ しゃぷ ぴしゃ ぴしゃ」「どどどど ざぶーん」。仲間と並んで「すこ すこ すこ すこ」。グラフィックな画面とゆかいなオノマトペで、目も耳も口もうれしい=0歳から(岸田衿子作、堀内誠一絵、880円)

丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さんのオススメ

 「ねこのあいうえお あそぶため うまれてきたのさ ぼくはねこ」(講談社) 自由に「生きる」を楽しむ猫。躍るような言葉の配列にじゃれあうような魅力的な版画。50音順に五七五調で紡がれていますが、そのことに気づかないくらいの圧倒的な自由さが心地いい!「たんたんと きょうも げんきに いきていく」。そう、生きるってこんな感じがちょうどいい。ぐーんと背筋を伸ばし、猫のようにありたいものです=3歳から(石津ちひろ文、山口マオ絵、1980円)

 「すみれちゃんのあついなつ」(偕成社) シリーズ3巻目。2年生になったすみれちゃん。妹は好きだけど時々面倒くさかったり、「ひげきてきとこどく」が胸に押し寄せてきて家出したり、色々あるけど「いまがすき」。すみれちゃんの夏ははじまったばかりだけれど、経験値をいっぱい積んで大きくなるのでしょう。子どもたちにも自由にいまを楽しんで成長してほしいなあ=小学校低学年から(石井睦美作、黒井健絵、1100円)

翻訳家 さくまゆみこさんのオススメ

 「5番レーン」(鈴木出版) 小6の少女カン・ナルは、水泳部のエースと言われるもののライバルに負ける試合が続いて悔しくてたまらない。何か仕掛けがあるのかとライバルの水着を見ているうち盗んでしまったナルは、そこから自分の心の中の闇と向き合い、やり直そうとする。競泳をやめた姉のエピソードや、転校生テヤンとの初恋もからむ韓国の物語。夏向きのさわやかな挿絵もいい=小学校高学年から(ウン・ソホル作、ノ・インギョン絵、すんみ訳、1760円)

 「サリーのこけももつみ」(岩波書店) ここでこけももと言っているのは、ブルーベリーのこと。夏になり、お母さんと山にブルーベリーを摘みに行ったサリーは、途中で間違えてクマのお母さんについていってしまう。一方子グマはサリーのお母さんについていく。やがて気づいたお母さんたちはびっくり! 本文は一色刷りだが、子どもたちが大きなドラマを感じられるロングセラー絵本=4歳から(ロバート・マックロスキー文・絵、石井桃子訳、1870円)

ちいさいおうち書店店長 越高一夫さんのオススメ

 「秘密の大作戦!フードバンクどろぼうをつかまえろ!」(あすなろ書房) 母と妹との3人ぐらしのネルソンは食べるものがなくなるとフードバンクを利用していた。ところがそこの食料が何者かに盗まれていることがわかり、ネルソンは友だちと一緒に探偵団を結成し、調査にのりだす。貧困という深刻な問題に明るく立ち向かっていく子どもたちの行動がたくましく映る=小学校高学年から(オンジャリQ.ラウフ著、千葉茂樹訳、スギヤマカナヨ絵、1540円)

 「妖怪一家 九十九(つくも)さん」(理論社) 「妖怪一家 九十九さん」シリーズ1巻目。九十九さんは7人家族だが、妖怪なので血のつながりはない。人間が住む団地で一緒にくらすために集められた。ヌラリヒョン、ろくろっ首、やまんばなど名前を聞いただけで、こわくてぞくぞくしてくるが、ユーモアたっぷりに描かれた妖怪たちは親しみやすくもある。こわさに面白さがプラスされた物語=小学校中学年から(富安陽子作、山村浩二絵、1430円)=朝日新聞2022年7月30日掲載