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「バークレー日本賞」に作家・柳美里さん 「在日という存在、内と外をつなぐ展望を提示してきた」

オンラインで会見する柳美里さん

 生涯を通して世界における日本の理解を深めた人物に贈られる「バークレー日本賞」に、作家の柳美里さんが選ばれた。柳さんは1日(日本時間)、賞を主催する米カリフォルニア大学バークレー校の日本研究センターで授賞式に出席し、オンラインの記者会見で喜びを語った。

 バークレー日本賞は2008年に創設され、数年に1度受賞者が発表されてきた。これまでに村上春樹さんや宮崎駿さん、坂本龍一さんらが受賞している。

 柳さんは受賞について「驚いた」とまず話した。「今年の6月で54歳になった。まだ『生涯を通して』という区切りがついていないと思っていたので」。賞の名に日本の国名が入っていることにも「私は国籍が韓国なので、よいのだろうかという気持ちもあった」というが、一方で「在日韓国・朝鮮人という存在が日本における一つの窓だとしたら、内と外をつなぐ展望を提示してきたという意味では、日本文学なのでしょう」とも語った。

 東日本大震災後に移り住んだ福島で書いた小説『JR上野駅公園口』の英語版(モーガン・ジャイルズ訳)が2020年に全米図書賞の翻訳文学部門に選ばれたことにも触れた。「本が一つの接点となって、福島という場所を知るきっかけになればいいなと思っています」

 『JR上野駅公園口』は、福島から出稼ぎのため上京し、東京の上野公園でホームレスとなる男性が主人公。全米図書賞の受賞会見で、コロナ禍などで「居場所がない人」への思いを語ったことについて改めて問われると、「いま世界のあちこちで内戦や戦争が起きていて、居場所をなくす人が生み出され続けている」と述べ、こう続けた。

 「アイデンティティーは『~である』というところにあると考えられているけれども、私の場合は、日本人でもないし韓国人でもない。『ない』というところにアイデンティティーを置いている方は海外にたくさんいる。そういう方が自分の物語だと共感してくださっているのだなと感じます」(山崎聡)=朝日新聞2022年10月5日掲載