雑誌などに載っている占いを読むのは好きである。以前、対面の占いに行って話すことがなくて困ったことを書いたが、都合のよいところだけ拾って読むのが好きだからだろう。「十二年に一度の幸運な時期です」みたいなのを探したり、気が進まないことがあると「今月は慎重に」を見つけてそのせいにしておく。
あれこれ読むので、占い師によって表現や文体が個性的だなあと思う。人気を左右するのは当たる当たらないではなくて、語り方なのだとよくわかる。「自分に当てはまる」と思わせる曖昧(あいまい)な表現のうまさに感心しつつ、近年の傾向としては全体にポジティブだ。要素を前向きに解釈してがんばっていきましょう、という感じが多い。
私が若い頃に流行(はや)っていた占いは、怒る・叱る系も多かった。街で行列ができると紹介されていたりテレビ番組に登場したり、きついことを言われた人が泣く場面もあったりした。私はそれがとても苦手だった。「厳しいことを言ってくれる人こそが本当に考えてくれている人」のような妙な思い込みは身近な人間関係や学校や職場でも長らくあって、その延長だったのかもしれないし、占いに限らずいろんな場面で似たような光景があって、人気があったのはなぜなんだろうと考えてしまう。今はリアルな人間関係でも立場の差があるところで一方的に叱責(しっせき)したりするのはよくないという認識になってきていると思う。ついでに思い出したが、二十年前に雑誌で「今月の○○座は運気が最悪、もしいいことがあったら抗議の連絡をしてこい」というのを見たが、ジョークなのかなんなのかいまだに謎だ。
最近の占いのやさしく語りかける文体を読んでいて、「疲れているから休んでもいい時期です」なんて書いてあると、現実の生活にしんどいことが多すぎるのかな、とも思う。私は占いそのものより、そこから見えてくるものに興味を持ってしまうのだろう。=朝日新聞2022年10月12日掲載