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たちもとみちこさんの絵本「おほしさま」 おほしさまってどんな味? いろんな味を想像してみて

文:坂田未希子

おほしさまを食べてみたい! 子どもの夢をアイデアに

――こぶたちゃんが、おほしさまのかたちのクッキーを作っていると、ことりさんがやってきて「おいしそうな においね? なんの におい?」と聞かれ、「おほしさま!」と答えるこぶたちゃん。「おほしさまってどんな味がするんだろう?」と、子どもたちの想像力も広がっていく、たちもとみちこさんの絵本『おほしさま』(教育画劇)。作品のアイデアは、あるテレビ番組を見ていたことから生まれたという。

 出版社の方から「3〜5歳を対象にしたもので、仕掛けをちょっと入れた絵本を」というお話をいただいていたのですが、なかなか思いつかなくて。時間ばかりが経ってしまって、どうしようかと悩んでいたときに、明石家さんまさんが司会の、いろんな人の夢を叶えるというテレビ番組を見ていたら、幼稚園に通うふたりの女の子が「どんな夢を叶えたいですか?」と聞かれて、「おほしさまが食べたい!」って答えたんです。「おほしさまってどんな味がするんだろうね?」って、ふたりで想像しながら話している姿がすごく可愛らしくて。そういう、子どもの夢がぎゅっと詰まって、子どものかわいらしさが溢れるような絵本を描きたいなと思っていたので、そこからアイデアをもらいました。

『おほしさま』(教育画劇)より

――「おほしさまを食べてみたい」というシンプルで子どもらしい発想が楽しい。

 子どもたちの想像力はすごいなと思います。ちょっとした一言に物語性があるというか。想像を膨らませていくことをサラッと言うのが面白いなと思います。

 おほしさまはどんな味がするのか、誰も食べたことがないので正解がないし、想像するのが楽しいですよね。子どもたちの夢を壊さないように、どう楽しくお話にしていくかが難しかったです。

――お話では出てくる動物たちがいろんな味を想像することで、読者の想像がより広がっていく。

 ことりさんはパンケーキみたいな味、ワニくんはシャーベットみたいな食感など、それぞれの動物たちになった気持ちで味を想像しました。これまで私自身はおほしさまの味を考えたことはなかったんですけど、パチパチする飴、みたいな感じかな。本を読みながらそれぞれの味を考えてもらえるとうれしいですね。星が出てくるからか、この本は寝る前に読んであげる親御さんが多いみたいです。それから、本を読んで親子で星型のクッキーを作って食べる、というお話もときどき聞きます。作品をいろんな形で楽しんでもらえるのもうれしいですね。

『おほしさま』(教育画劇)より

自然の中で遊ぶ楽しさ、伝えたい

――子どもの可愛らしい世界観が好評となり、こぶたちゃんを主人公にしたシリーズ作品に。

 シリーズになると思わなかったので、お話をいただいてとてもうれしかったです。実は、こぶたちゃんの顔も最初と少し変わってきているんです(笑)。シリーズ2作目の『おひさまとかくれんぼ』も、子どもの夢を叶えるということをベースに考えました。おひさまが雲に隠れるところをヒントに、子どもたちがおひさまとかくれんぼしたら楽しそうだなと思ったのがきっかけです。

 シリーズは7冊出ていて、今、海をテーマにした新作を作っています。共通しているのは、動物たち(子どもたち)が四季折々の楽しみを見つけながら、夢いっぱいに遊ぶというところ。私は子どもの頃、家の周りに田んぼが広がっていて、その向こうに川があってというような、自然豊かな環境で育ちました。自然の中で遊ぶので、夏は虫取り、冬はソリやスキーなど、季節によって遊びもいろいろ変わります。田んぼに雪で家とかソファやテーブルを作ったり、虫取りとその世話や観察は仕事のように毎日していましたね(笑)。そういう楽しさを伝えたいという思いもあって、絵本の中でこぶたちゃんたちが風と遊んだり、雪の中で遊んだり、ピクニックに出かけたり、自然の中でたくさん遊んでいます。

子どもの成長に寄り添った絵本を

――子どもたちの夢を詰め込んだかわいらしい物語をより引き立てているのが絵。色鮮やかで切り絵のような画風が特徴的だ。

 絵はアクリルとか絵の具とか、いろんな画材で描いた素材をパソコンに取り込んで、それをパソコン上で切り貼りして描いています。もともと、子ども向けの映像制作会社でアニメーションの仕事をしていて、その中で手や目などをパソコンを使ってパーツ分けする過程があったんです。その手法で絵を描いたら面白いんじゃないかと思ってはじめたのがきっかけでした。紙の切り絵と近いのですが、コンピューター上だと、素材と素材を透かして混ぜ合わせ不思議な素材感を作れたり、色もいろいろ変えられたりと、一つの素材から無限に新たなテクスチャーを作り出すことができるので、そこが面白いなと思っています。

たちもとみちこさん

 絵を描くのは楽しいですね。絵本を作るとき、お話もすごく重要なので言葉の一つひとつを慎重に考え込んでしまう部分もあります。しかし、お話ができあがると、もうその世界にどっぷりとつかり想像しながらニュートラルな気持ちで描くことができ、自然とアイデアも広がっていきます。自分では気づいてなかったんですけど、絵を描いているときは、画面を見ながらいつもニコニコしているらしいです(笑)。お話の世界を想像すると楽しくなってくるというか、最近、自分でも笑っているのがわかるようになりました。自分自身、楽しい気持ちで描いているので、読む子どもたちも笑顔になれるようなお話や絵の世界を描いていきたいですね。

――絵本作家としてだけでなく、子ども向けのプロダクトや服、テキスタイルのデザイン、映像などさまざまな分野でも作品を手がけているたちもとさん。今後は、子どもの成長に寄り添った絵本を作っていきたいという。

 幼稚園のころに「絵本作家」という言葉を聞いて、カッコいい! と思ってから、絵本作家になるのが夢でした。大学で絵本を勉強するうちに、読み手である「子ども」に興味を持って、絵本だけでなく、子どもに関するあらゆるもののデザインをしたいと思って、いろいろなかたちで携わってきました。

 絵本も、いつの時代も楽しめる普遍性のあるものを描いていきたいのと、赤ちゃんには肌触りも楽しめる布の絵本、小さい子には仕掛けのある読み物の絵本、もう少し大きくなったら一人でも読める絵本など、成長に合わせて楽しめる作品も作っていきたいです。今、教科書やピアノの楽譜、辞典などの挿絵のお仕事もさせていただいていますが、年齢に合った学べる本も作ってみたいですね。絵本をはじめ、子どもたちの身近にあるさまざまなアイテムを通して、楽しみ親しんでもらえるとうれしいなと思います。