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一穂ミチさん「光のとこにいてね」 女性同士の慕情、心にともる明かり 

『光のとこにいてね』(文芸春秋)

 なぜ、どうしても彼女にひかれてしまうのだろう。一穂ミチさんの『光のとこにいてね』(文芸春秋)は女性同士の慕情を描き、切なさをかきたてる。第168回直木賞候補になり、書店員が売りたい本を投票で選ぶ第20回本屋大賞(4月12日発表)にもノミネートされている話題作だ。

 ひとり親家庭の果遠(かのん)、医者の家で裕福な結珠(ゆず)。隔たった環境で育つ同い年の2人が7歳で出会い、離ればなれになって成長し、15歳、29歳で再会。思い合い続ける四半世紀を描く。

 構想のもとは3年前、「友人と広い露天風呂につかりながら、同性の恋人と来たら楽しいだろうなと思った」と一穂さん。ボーイズラブ作品を中心に活躍してきたが、今回は女性同士の関係性に光をあてた。

 かといって、はっきりした恋愛感情とは言いがたい。名付けにくい関係だが、互いは心にともる唯一無二の明かりなのだ。

 「人の関係はゆるくていい。親子とか夫婦とか枠にとらわれず、一緒にいて楽というつながりが増えればいい」。一穂さんはずっと考えてきた。

 作中、大人になった2人は将来どうなるかわからなくても、わが道を選ぶ。「その選択が他者に受け入れられるかは別にして、人生を決めることを人任せにしてはいけない」。そんな強い思いがある。

 原体験は子どものころ、親の都合で引っ越したことだそうだ。「なんでやねん、好きな家に住みたいのに。子ども心にそう感じたままならなさが根っこにあるのかな」

 大阪に暮らし、会社に勤めながら執筆を続ける。優しさを感じる題名は、印象的な日だまりのイメージから思いついたという。コロナ禍の春、近所の公園に行くと、お花見の人も見えず、だれもいなかった。「ただ、日だまりに桜が咲いていた。人間が見ていなくても、桜はきれいに咲くんですよね」(河合真美江)=朝日新聞2023年2月8日掲載