【この記事で紹介する絵本】
- クロヒョウだって、乗りたいこともあるんです。『のせてくださいな』
- 夢のような一日のお話が二つ。『うさぎのさとうくん あさひ』
- 心ときめく時間の、その後に。『まよなかのゆうえんち』
- 歌いたくなる、踊りたくなる!『バンバンバンバンバンソウコウ』
- はじめて見る外の世界は…『ホッキョクグマのプック』
- 想像したことのない家ばかり!『どんな いえに すみたい?』
- 謎の言葉のその意味は…?『パライパンマンマ』
- ぼくにまかせれば、もう安心…「ああっ!」『ねむらせやのネミイ』
- ちょっとだけ夜が待ち遠しくなる…『きみだけの夜のともだち』
- はたらきもので、素早くて、愛らしい。『ちいさなトガリネズミ』
- うまれるまでの10か月って、どんな世界?『あなたがおなかのなかにいたとき』
- ぼくが色をもどしてあげる。『ぼくのともだちは、あたまに はながさいている』
- 引っ越し先で出会ったのは…『アグネスさんとわたし』
クロヒョウだって、乗りたいこともあるんです。『のせてくださいな』
ある日、バス停でバスを待っていたのは、なんとクロヒョウ。どうにもかわったクロヒョウで、「のりものにのってみたい」と思っていたのです。運転手さんはびっくりして、ことわります。それでもお行儀よくしていることを条件に、クロヒョウはバスに乗せてもらいます。バスが走り出すと、窓から入る風がクロヒョウの鼻をくすぐります。むずむず、むずむず……。
【編集長のおすすめポイント】
こんなにかっこいいのに、中身は天真爛漫、好奇心旺盛な子どもそのもの。そんなクロヒョウと相性がいいのは、やっぱり子どもたちなのでしょうか。たくましい背中をぎゅっと丸めて三輪車に乗る、そのうしろ姿からは嬉しい気持ちがにじみ出てきています。よかったね、クロヒョウさん。子どもたちのいいお友だちになれそうです。
夢のような一日のお話が二つ。『うさぎのさとうくん あさひ』
うさぎのさとうはねるくんは、ある日うさぎになったんですが、最近とくにのんびりと暮らしているようです。カーテンのすきまから入る細い光。それをそっとつまむと、光の棒に。その棒でコーヒーをかきまぜます。ごっくん、いいかおり。空が明るくなってくると、今度は光の棒で木漏れ日をあつめ、かさねて、たき火に。日が暮れてくると、夜露に灯をともしていき……。さとうくんの夢のような一日を描いたお話「あさひ」「とうだい」の2編が収録されています。
【編集長のおすすめポイント】
さとうくんは、うさぎになったからこんな素敵な暮らしをしているのでしょうか。それとも、こんな素敵な暮らしをしているから、うさぎになったのでしょうか。木漏れ日を集めるさとうくんや、ほのかな光に包まれながら眠りにつくさとうくんや、月のさきっぽを口にするさとうくんが、うらやましくて仕方がないのです。強烈な憧れを抱かせてくれる絵本です。
心ときめく時間の、その後に。『まよなかのゆうえんち』
いつもはひそやかな森の夜が、はなやかな明かり、にぎやかなざわめき、はなをくすぐるにおいでいっぱい。動物たちがすむ森に移動遊園地がやってきたのです。やがて静まりかえった遊園地。それを待っていたかの様に集まってきた森の動物たちは……。文字は一切出てこないこの絵本、光と影を幻想的に描き出す絵に誘導されながら、物語が始まっていきます。
【編集長のおすすめポイント】
一冊を通して味わうストーリーだけでなく、どのページの絵を切り取ったとしても、たくさんの情報がつまっているこの絵本。明るくはなやかな場所と暗闇の対比、にぎやかな状況の中でも何かを考えているきつねの子の様子、自分たちの気配を全て消して去っていく動物たち、何かに気づく守衛さん……。誰かにとっての特別な瞬間を丁寧に見つけていってみてくださいね。
歌いたくなる、踊りたくなる!『バンバンバンバンバンソウコウ』
「バンバン バンバン バンソウコウ ころんだ ときには バンソウコウ」、貼って、はがして、また貼って。絵本の中に、バンソウコウがとにかくいっぱい! あっちにもこっちにもバンソウコウ。楽しいリズムで歌いながら、バンソウコウを貼れば、気分もあがって踊りたくなる!?
【編集長のおすすめポイント】
「バンソウコウって言ってるだけで、何がそんなに面白いの?」それが面白いのです。読んでみて驚くのです。何度もバンソウコウって、大きな声で言っているうちに、バンソウコウってなんだっけ? ってなってくるのも楽しいのです。あちこち貼るだけ貼って、バンバン歌って、元気になれば、それはもうバンソウコウも喜ぶってもんですよね。さて、どんな時に読んでみようかな。毎日の生活の中でも活躍してくれそうな一冊です。
はじめて見る外の世界は…『ホッキョクグマのプック』
さむい冬のある日。カナダの北極地方で生まれたのは、小さなホッキョクグマのあかちゃん。あかちゃんの名前は、プック。プックは、安全な巣穴の中でおかあさんと一緒にすくすくと育っていきました。冬が終わる頃、少し大きくなったプックは、初めて巣穴の外に出ます。そこにあるのは、見たことのないものばかり。プックのだいぼうけんのはじまりです。
【編集長のおすすめポイント】
自分たちの住む家からは、はるか遠い場所で暮らしているプック。けれど、初めての外の世界にはしゃいでいたり、おかあさんの真似ばかりしていたり、迷子になって心細い思いをしている姿に、なんだか親近感を覚えてしまう子どもたちも多いことでしょう。「ホッキョクグマのこと、もっと知りたいな」、そう思ったら巻末の解説も読んでみてくださいね。ホッキョクグマやすべての生きものたちが、この地球でかわらずにずっと生きつづけられますように……そんな作者の思いとも重なっていくはずです。
想像したことのない家ばかり!『どんな いえに すみたい?』
ねずみのヘンリエッタは世界的に有名な建築家。設計から内装、家具のデザインまで、お客様が望む以上の仕事をするのです。りすがお願いしたのは、ツリーハウス。ますは海の楽園のような家。地面の下に快適な部屋をいくつも設計したのは、毎日獲物を探して走りまわっているきつねのため。これならゆったりと過ごせます。他にも驚きの家がたくさん登場します。「朝から晩まで太陽と一緒に過ごせるように」とお願いしたのは……?
【編集長のおすすめポイント】
登場するのは、りすやもぐら、かわうそやふくろうなど、私たちの暮らしとは全く違う動物たちの家ばかり。それなのに、こんなにも具体的に家が設計され、どれもが快適な日常が想像できてしまいます。何より驚かされるのは、その暮らしが、どれもうらやましくなってしまうこと。これが建築家の仕事なのでしょうか。ヘンリエッタへの憧れの気持ちとともに、ちょっと真似してみたくなってしまうのも、この絵本の大きな魅力なのでしょうね。
謎の言葉のその意味は…?『パライパンマンマ』
小さなマシュマロンたちがのんびり暮らす、マシュマロン村。気ままな毎日を送っていたある日、村じゅうに響き渡ったのは大きな謎の声。「パライパンマンマ!」。声の主は、見たこともないくらい大きくて黒いモジャモジャのいきもの。驚いたマシュマロンたちは、モジャモジャは自分たちを食べようとしてるのではないかと恐れ、戦うことを決意するのです。
【編集長のおすすめポイント】
「ちょっと待って。大きな声でさけばずに、静かにゆっくり落ち着いて話してみて」。まわりの雰囲気に流されず、相手をじっと見て、冷静に話を聞こうとする小さな一人のマシュマロン。もし自分だったら、こんな行動できるかな。でも、「友だちづくり」の第一歩って、こういうことなのかもしれませんよね。わかりあうって素敵。絵本を通して、そんな体験ができる一冊です。
ぼくにまかせれば、もう安心…「ああっ!」『ねむらせやのネミイ』
ノックを3回すると出迎えてくれたのは、ねむらせやのネミイ。彼の手にかかれば、どんな子だってすぐにぐっすり夢の中なんだって。ねむれないっていうのは、ねむけくんがどっかいっちゃったってことみたい。久しぶりのお客さまに、はりきって準備するネミイ。さすがねむらせ検定1級の腕前、と思ったら……あれれ!
【編集長のおすすめポイント】
自分のねむけとたたかいながら、寝かせてくれようとする彼の滑稽な姿といったら!そんな様子を見ているだけで、なんだか幸せな気持ちになってくるのです。はあー…あんしんあんしん…ゆっくりぐっすり。それではみなさま、おやすみなさい。すみからすみまで、ネミイの愛らしさに包まれた一冊です。
ちょっとだけ夜が待ち遠しくなる…『きみだけの夜のともだち』
ガスパールは、くらやみがこわいのです。そんな時、彼は思います。ぼくに、夜だけのともだちがいてくれればいいのに。「わたしをよんだ?」、ベッドの下の扉からあらわれたのは、小さなネズミ。ネズミは、驚いているガスパールを家の中のあらゆる部屋につれていき、夜のともだちに会わせてくれます。それぞれに悩みをかかえていた彼らとガスパールは、すぐに仲良くなっていき、楽しい時間を過ごします。やがて……。
【編集長のおすすめポイント】
想像をふくらませれば、ふくらませるほど。たくさんの冒険や物語を知っていれば、いるほど。その終わりに不安をいだき、なんだか心細くなり、まっくらになる夜が怖くなってくるものなのかもしれません。この絵本は、そんな繊細な心に強い言葉をかけるわけでもなく、克服をするようにさとすわけでもなく。ただ近くにそっと寄りそって、一緒におしゃべりしたり、遊んだり。静かに、そしてにぎやかに、「大丈夫だよ」とささやき続けてくれるのです。
はたらきもので、素早くて、愛らしい。『ちいさなトガリネズミ』
はたらきもののちいさなトガリネズミの1日は、毎朝6時の目覚まし時計からはじまります。朝ごはんははちみつビスケットを3枚、お気に入りのお皿で食べて、決まった時間に、決まった電車で、決まった仕事場にいき、きちんと仕事をはじめます。同僚の信頼も厚くて、ちょっとした会話も楽しげです。帰り道のお買い物もまた、ふわっといい香りが漂ってきそうで……。
【編集長のおすすめポイント】
小さなからだで大きな傘をしっかりと持ち、黄色の可愛い長くつをはいて歩くトガリネズミ。この姿を見て、ほうっておける人がいるでしょうか。このトガリネズミはいったいどんな家で暮らしているの? 仕事はしているの? どんな食べ物が好きで、どんな趣味があって、どんなお友だちがいるの? 押し寄せる好奇心に対して、一話ずつ丁寧に解き明かしていってくれるのがこの物語。大切に愛おしみながら楽しんでくださいね。
うまれるまでの10か月って、どんな世界?『あなたがおなかのなかにいたとき』
あなたが生まれるまでの10か月って、どんな世界か想像できる? 生まれる8か月前、お母さんが妊娠に気づく頃のあなたは、サクランボくらいの重さ。7か月前になると、目や耳、手や足、口や歯ができはじめて人らしくなってくる。重さはまだイチゴくらい。1か月1見開きを使って、胎児の状態や体の中と外の様子を丁寧に説明していってくれるこの絵本。具体的になればなるほど、その世界はより神秘的に感じられます。
【編集長のおすすめポイント】
おかあさんのお腹の中にいる赤ちゃんは、いったいどんな風に過ごしているんだろう。考えれば考えるほど不思議でたまらなくなるのは、子どもたちだけではありませんよね。でも、その赤ちゃんが「イチゴくらいの重さ」だとか、「キャベツくらいの大きさ」になっただとか聞いた途端、とても具体的に存在を感じることができるのです。さらに森の木々や草花に包まれている赤ちゃんの姿を見れば、理屈を超えて、その存在の尊さを実感することでしょう。「生命の誕生の奇跡」を絵本で触れることができるのは、とてもありがたいことですよね。
ぼくが色をもどしてあげる。『ぼくのともだちは、あたまに はながさいている』
ぼくの友だちデイビッドの頭には、きれいな花が咲いている。ぼくたちはいつも一緒に遊ぶ。はしゃいだり、歌ったり。鳥の家族がデイビッドの頭に一か月もいた時は、おかしくってみんなで笑ったり。ところがある日、デイビッドの頭の花びらが一枚ずつとれていき、デイビッドは笑わなくなってしまった。おしゃべりもしないし、遊ばない。枯れ枝みたいなデイビッドの頭を見ながら、ぼくはいいことを考えた……。
【編集長のおすすめポイント】
自分とは違う誰か。異なる環境だったり、性質だったり、元気になれる方法だって違うかもしれない。そんな誰かの気持ちを想像するのは、とても難しい時もあります。でも、絵本の中の「ぼく」は言うのです。「デイビッドはぼくの一番の友だちで、ぼくもデイビッドの一番の友だちだから」と。だから彼のことを見守っていくだ、と。そのシンプルな答えは、読む人の心の中にきっと素直に受け入れられていくことでしょう。
引っ越し先で出会ったのは…『アグネスさんとわたし』
「絵をかくのが、だいすきなんでしょう?」そう言って家のまわりを案内してくれたのは、アグネスさん。自然に囲まれた、広く静かな風景の中で、感性を響き合わせる女の子キャセレナと隣の家のおばあさん。夏に出会い、秋、冬と季節が移りかわる中で心を通わせながら過ごしていくふたりの時間の尊さが、読む人の心の奥底に染みわたってきます。ふたりはともだちになったのです。
【編集長のおすすめポイント】
アグネスさんの家に行き、一緒に体を動かしたり、話をしていると、もう帰り道には絵が描きたくて指がむずむずしてくるキャセレナ。キャセレナの描いた絵を見て、「わたしの心にむけた 詩みたいね」と言うアグネスさん。大切なともだちに出会うことのできたふたり。ふたりがかわした最後のおしゃべりは、どんな内容だったのでしょう。そんなことを想像しながら、絵本をまた最初から何度も読み返してしまうのです。
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