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横関大さんのソウルフード「富士宮やきそば」に合うワインは

©GettyImages

 皆さん、こんにちは。日本で一番ロゼワインを飲む小説家、横関大です。
 私の故郷は静岡県富士宮市である。小学生の頃、土曜日の昼食は焼きそばと決まっていた。ホットプレートで焼きそばを焼き、それを食べるのだ。たまに近所の子供たちが訪れたりして、非常に楽しい時間だった。焼きそばは私にとって懐かしく、大切な料理の一つだ。
 私は大学進学を機に上京、自炊するようになった。そこで東京のスーパーで購入した焼きそばを調理して食べたのだが、「何か違うな」と首を傾げた。富士宮で食べていた焼きそばとは別物だった。が、当時の私は深く追求することもなかった。

 ここで解説しよう。モチモチした食感が特徴である富士宮焼きそばだが、これは戦後の食糧難の時代、市内にある製麵所がビーフンを再現しようとした過程で生まれたのがその起源だと言われている。長年、富士宮市民は「これが当たり前」という感覚で食べ続けていたのだが、2000年頃に「俺たちの食ってる焼きそばって特殊じゃね?」と気づき、焼きそばを町おこしに利用できないかと考えるようになった。行政をも巻き込んでPR活動が開始され、2006年にB級グルメの祭典であるB-1グランプリの初代王者に輝き、その知名度は一躍全国区となる。
 今も私は週に一度、必ず自宅で富士宮焼きそばを食す。まずは肉カスを油で炒める。具材はシンプルに豚バラ肉とキャベツのみ。ソースはウスターソースがメイン、少量のとんかつソースも。そして完成後にサバやイワシの削り粉をかけて食べるのだ。食事としても最高だが、酒の肴にもなる。私は長年ビールと合わせていたのだが、ここ最近は違うものを合わせるようになった。そこで冒頭の一文。ロゼワインの出番だ。

 私は一応J.S.A認定のワインエキスパートの資格を所持している(ちょっと自慢)。皆さんはペアリング、またはマリアージュという単語を耳にしたことがあるだろうか。ワインと料理の相性を考え、それを提供していこうというスタイルのことだ。たとえば白ワインには白身魚のカルパッチョなどの淡泊な料理が、赤ワインにはステーキやビーフシチューといった濃厚な料理が合うとされている。
 だが考えてみてほしい。淡泊か、濃厚か。この二つに大別していいのだろうか。実は日本人は淡泊でもなく、濃厚でもなく、その中間的な食べ物を好んで食べていやしないか。たとえば焼き鳥や肉ジャガ、鮭のムニエル等々。白ワインは軽すぎるし、赤だとちょっと重い。そんな料理ばかりではないか。
 そんなときに出番となるのがロゼワインだ。赤と白の中間であるロゼワインこそ、日本人が好んで食べる料理に合わせ易いワインなのである。もちろん、私が週一で食べる富士宮焼きそばにもバッチリ合う。

 日本ではなぜかお花見の季節に大量に売られているロゼワインだが、世界的にもブームが訪れており、近年フランスでは白ワインよりもロゼワインの売り上げの方が上回るようになった。様々な料理に合う、汎用性の高さの賜物だろう。
 ちなみに白ワインと赤ワインを混ぜて作られるのがロゼワインだと認識している方が多いと思うが、それは間違いだ。ロゼワインの作り方は、赤ワインと同じように黒ブドウを破砕し、醸造の途中で果皮などを抜きとる方法(セニエ法と呼ばれる)が一般的だ。
 そういうわけで、私は今後、富士宮焼きそば&ロゼワインのペアリング普及活動に励んでいきたいと考えている。主旨に賛同してくれる方、間違っても連絡してこないでください。