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ロザン菅広文さんが「京大中年」に書いた、相方と第一線で20年以上コンビを続けられた秘訣

ロザン菅広文さん=junko撮影

【インタビュー前編はこちら】

>ロザン菅広文さん「京大中年」インタビュー 仲良し相方と自分への手紙で振り返る、高校時代からの二人三脚

頭の中でも敬語を使う

――本の中では、菅さんが20年以上にわたって第一線で活躍し続けるヒントも散りばめられています。たとえば、「仕事のできる人と仕事を続けていく方法」として、「敬語を使う」こと。「長くコンビを続ける秘訣」についても、「相手に敬意を持つこと」。

 はいはいはい。

――どんなに親しい、近しい人でも、敬語を用いることで、一定の距離、バッファが生まれる。

 「敬語を使う」っていうこと自体もそうですけど、頭ん中で敬語を使えているかっていうのもすごく大事なんです。僕は「宇治原さん」って言いながら、頭の中でも「宇治原さん」になっているんです。そこが、頭の中では呼び捨てで「宇治原」と思いながら、「宇治原さん」と言っていると、また違ってくると思うんですよね。それは、どんな仕事をする上でもすごく大事かな、って。

 このインタビューは敬語で喋っているじゃないですか。たぶん、頭ん中も敬語やと思うんですよ。お互いに敬意がある。それが一番、仕事をしてスムーズにいくと思うんですよね。これが「タメ口」やったらどうなるかってなった時に、文章として、くだけて良い文章になるかってなったら、またそれも「?」で。じつは敬語の方が良い部分もあるのかなと思うんです。

――下手に詰め過ぎない距離感。読者も、風通し良く読める。

 うちではマネジャーも絶対に呼び捨てしないんです。「○○君」って絶対言うんで。呼び捨てにすると、言い方、接し方も変わってしまうと思うんです。それってとても大事なことである気がします。

――「マネジャーの悪口」を言うか、言わないか、ということも本書に言及されていますね。マネジャーとの関係性は、長くこの仕事を続けていくうえでは……。

 いや、ひじょうに大事やと思うんですよね。自分たちは恵まれたかなとは思うんで。歴代で、全員ほとんど、みんな良くしてくれていた。でも、一線は引いています。僕らは「商品」なんで。マネジャーは年下ですけど、要は(吉本興業の)社員で、「使ってくれている人」。僕らは「使われている人」って意識をちゃんと持たないと。(マネジャーは)僕の部下ではないから、呼び捨ではないんですよ。

「ロザン菅」はアバター

――ご自身は「商品」だと、本のなかでも書いていますね。その意識を持ち続けるって難しい。

 僕、「ロザンの菅」と「菅広文」は分けているんで。アバターなんですよね、「ロザンの菅」って。だから僕も「ロザンの菅」を僕は商品やと思っているから、みたいな感じかも知れない。うん。うん。

――「ロザンの」という冠がついた段階で、ご自身そのものから遊離するような印象なんでしょうか。

 それは正直ありますよね。要は今、ここで喋っていることも、僕、「ロザンの菅」として喋っているんで。「菅広文」として同級生と喋る時って、ちょっと、ちゃうかったりするんですよ。「いやあ、『ロザンの菅』はあんなふうに言ったけど、でけへんよなあ」って思う自分もいる。「『ロザンの菅』、あんな言うてたやん、でも、でけへん。あれ嘘や」って(笑)。そんなんありますよ。

――そのアバターと、ご自身との、関係性を良好に保つというのも大事ですね。

 みんな、仕事をしている自分と、本来の自分を一致させようとし過ぎているかなって思います。会社員の方もそうやと思うんですけど、会社で働いている自分と、家に帰った自分って、僕は全然違って良いと思っていて。「外づらの自分」と、「うちの自分」と、全然違うものであって良いと思うんです。

――違っていた方がむしろ、仕事を家に持ち帰らずに済むし、精神的にも良い。

 そういう気はします。良い状態を保てそうな気がします。宇治原さんと喋る時はそんなんあったりします。宇治原さんと喋る時に、「どっちで喋るかを考える自分」がいたりするんです。「同級生の俺」で喋るとこうやなあ。ただ、ロザンとして見た時は、この方がいいんちゃう、みたいな。同級生やったら「わかるわかる、それ!」みたいな。でもロザンとして考えたら、「それはちょっと違うかも知れない」みたいな。特殊かも知れないですね。同級生でコンビ組んで、仕事でやっているから。いろいろ混ざっているんですけど、分離する時もある。分離して考える時もある、みたいな。

宇治原さんのご両親に赤裸々な手紙

宇治原さんの両親へ。
ご無沙汰です。
菅です。
あ、子どもの出産祝いありがとうございました。
自分にも子どもができたことにより、お2人の気持ちが痛いほどわかるようになりました。
京大に入って芸人になる。
そら反対しますよね?
反対しない方がおかしい。

(本書第7章「宇治原さんの両親へ」より)

――この本では、宇治原さんのご両親に宛てて書いた、かなり赤裸々な手紙がありますね。ご両親はもうご覧になっていますか。

 まだ読んでないですね。ご両親について以前に、「宇治原さんに読ませましたか?」って、取材でよく聞かれるんですけど、でもこれ小説なんでねー。

――あ、そうか。小説だから。

 そうです。だから、何かをとやかく言われる筋合いはないっ!(笑)。

――あはは(笑)。「筋合い」って、字に書くとするとすごく剣呑かも。この場の和やかな雰囲気が伝われば良いですが。

 (宇治原さんのご両親に)怒られたらどうしよう。宇治原さんに謝っておいてもらいます(笑)。

――でも、宇治原さんの結婚式の場面での、お父さまの言葉や、それについての菅さんの描写は、映画のような感じで、読みながらウルッと来てしまいます。

 そう言っていただけることが多いですね。いや嬉しいな。

――そして、読み進めるうち、「はじめに」の章がじつは大事な意味を包摂していることが、だんだんわかる構成になっています。「終わりに」の宇治原さんの一言に帰結されていく。見事なオチですね。

 ありがとうございます。嬉しいです。書きながら思いついたんです。その軸は思いついていたので、そこからどういう文章の構成にしようかなっていうのを考えていたんです。

次は「京大火葬」?

――次作も『京大○○」が、また数年後に執筆されるのかな、と予想します。

 そうですね。今度は何かな。『京大老人』かな。それか、『京大火葬』。死後の世界(笑)。

――出す版元が変わっていきそう(笑)。「2人で話していくことを継続」させる試みの一つとして、YouTube「ロザンの楽屋」を高頻度で更新されていますね。普段の楽屋そのままのテンションで、時事問題や私生活など、率直な言葉が飛び交い、フォロワーが17万人を超える人気に。視聴者からの反応は?

 やっぱり、コメント欄がありがたいですよね。読んでいても、すごいしっかりした方が集まってくれているから、「やって良かったな」と思うし。僕らが荒い言葉で喋ったら、荒いコメントも増えていたはずやと思うんですよ。コメント欄を見た時に、僕らもちゃんと丁寧に喋れているんやなっていう。鏡みたいなもんじゃないですかね。

――発する言葉が汚ければ、返ってくる言葉も汚くなる。「炎上」といえば、本書の中でも菅さん自身の見解を述べています。とても現実的な考え方だと思います。

 悩まれている方がおったら、手助けになれたらありがたいかなって気持ちもあったりするんですよ。自分が思っているよりも、すぐに火は消えるし、じつは「あなた自身は燃えていない。燃えている奴が囲ってくる。これが『炎上』の正体でした」っていうことがあったり。そういうのを伝えたいと思いました。3日我慢すれば良い。

――昔は「人の噂も七十五日」って昔は言いましたけれど、今は3日。

 じっさいに、何回か日数を数えてみたんですけど、3日ぐらいでしたね。Twitterは僕、ミュートするんですよ。ほんだら、結構ね、ひとりの人が何十回も書いていることがわかるんですよ。数十人が書いているわけじゃないってことも、わかってくれたらなって。炎上で苦しんでいる方がおられたら。じつは5、6人が、「×10」「×20」ぐらいで書いているんですよね。100人ぐらいで書いていると思うじゃないですか。実は5人やったりするんですよ。アカウント変えて、とかもあるし。それを知ってもらって、悩まれている方はラクになってくれたら嬉しいかなと思います。

――ミュート、大事ですよね。ブロックしちゃうと角が立つけれど。

 うん、うん。そう思います。もちろん、一番良いのは見ないこと。でも、それも人間、どうしても見てしまう時もあるやろうし……。最近、Twitterの反応は正直、あんまり見ていないですね。「もう、そういうところじゃなくなってきたかな」って。だいぶ荒くなってきているじゃないですか。そもそも、もうちょっと楽しいものだったと思うんですけど、今はあんまり加担するものでもないかなって。

ロザンの歴史から語る人生のヒント

――時を経て「ロザン」というコンビが熟成される歴史と同時に、人生のヒントも本書にはいっぱい。

 本音で言うと、僕は笑かしたかっただけ。普通に笑える本になっていると思うんで、気軽に読んでもらえたら一番嬉しいなと思います。そこで何か気づく、ストレス発散になればすごくありがたいです。

「チャンスを手に掴むのは、風車を動かすのに似ている。まず回せ」

「プレゼントをあげるのが下手な人には、良い人が多い」

(いずれも本書より)

――独特な視点から語られる言葉の数々、「おおっ!」って思う瞬間があります。

 あと、写真写りが悪い人が好きです(笑)。写真写りが悪い人のほうが、僕、良い人のような気がする。ちなみに僕は写真写り、良いですよ(笑)。

――そういうちょっとダークな「ブラック菅ちゃん」も、今後は本でもライブでも拝見したいです。

 あははは(笑)。ありがとうございます。