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誰もが自分に合った読書の形を「読書バリアフリー」

 市川沙央さんの小説「ハンチバック」の芥川賞受賞を機に、関心が高まる読書バリアフリー。視覚障害や外国ルーツ、ディスレクシア(読み書き障害)といった読者の特性によって、生じる「バリア」は多岐にわたる。『読書バリアフリー』は、あらゆる人が自分に合った読書の形を探すためのガイドブックだ。

 点字絵本や易しい文章で書かれた本、文字拡大や音声読み上げに対応した電子書籍など、さまざまな事例を紹介。バリアを抱える人たちが自身の読書スタイルを語るインタビューも収録した。全ての漢字にルビがつき、小学生でも読みやすい。

 編著は、読書バリアフリーをテーマに書籍の発行・発売などを手がける「読書工房」。代表の成松一郎さんは以前、複数の出版社でこうした本を企画するも「福祉の本を作る気はない」と却下された。「今でも多くの出版関係者は『自分たちの問題じゃない』と思っているのでは」

 読書が困難な人にとって、なるべく早期に自分に合った読書スキルを身につけることが重要なのだと、「読書工房」編集者の村上文さんは言う。文章が読めれば高等教育への道も開ける。「『あなたは勉強しなくていい』と言われていた人たちも、実はそうではないということが広まっていけば」(田中ゑれ奈)=朝日新聞2023年9月16日掲載