今年の秋の褒章で紫綬褒章に決まった小説家の東野圭吾さん(65)が、出版社を通じてコメントを発表した。
デビューからの38年間を振り返り、「頭の中にあるのは、読者を楽しませるものを書く、もっと読みたいと思ってもらえる作家を目指す、ということだけです。その感覚は山登りに近く、とにかく地道に前に進んでいけば、いずれは頂点に辿(たど)り着けるはずだと信じています」とつづった。
一方で、「ただし山の頂点がどこにあるのかは、わかっておりません。今、自分が山のどのあたりにいるのかも把握できておりません。果たしてこのルートで合っているのだろうか、おかしな道に迷い込んでいるのではないか、と不安になることもあります」とも。
その上で、「文学性は追わず、ただひたすら娯楽性を求めて書き続けてきました。自分が作家として生き残っていくには、そこにしか活路はないとわかっていたからです。その覚悟だけが信用できる唯一のコンパスでした」と回想。「このたびの受章は、これまでにおまえが辿ってきた道は間違っていない、という励ましと受け取らせていただきます。今後も精進し、頂点を目指し続けたいと思います」と結んだ。=朝日新聞2023年11月8日掲載