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中年の時間割 津村記久子

 十年以上キッチンタイマーと共に仕事をしてきて、〈二十五分仕事+十五分休憩〉というサイクルを何度か繰り返すことでその日のノルマをヨボヨボとはたしてきたのだが、このたび変更した。ちなみに前述のサイクルは「ポモドーロ・テクニック」という時間管理法を自分向けにアレンジしたもので、本家ポモドーロは〈二十五分仕事+五分休憩〉になっていることを記しておく。十五分も休むのは、ひとえに自分が疲れやすい怠け者であるせいだ。

 おそらくはポモドーロがいちばん有名だと思うけれども、ほかにも〈五十二分+二十分〉がいいとも聞いたことがある。試してみたが、あまりうまくいかなかった。ポモドーロもまた、自分のエンジンのかかり方基準でまあまあ書けるようになってきた、という時点で中断したりするので、少し自分に合わなくなってきたと感じていた。

 でも〈何分仕事+何分休憩〉にすればいいのか? 大学に授業の仕事で行った時に、一コマ九十分なんて集中力が続かない、大変だな大学生は、と考えたことを思い出した。高校の時間割でもたぶんだめだ。中学でもまだ苦しい。しかし小学生では? と思いついて、今どきの小学校の時間割を調べ〈四十五分+二十分〉に変更した。これは当たりで、わずかだが成果が出始めた。どうやらわたしは小学生の時間感覚を持つ四十五歳だったようだ。

 小学校の時間割について調べながら、小学一年の最初に配布された時間割表を懐かしく思い出した。緑、黄、水色、ピンク、オレンジの五色があって、好きな組み合わせを二枚もらえた。自分はピンクと水色にしようと思っていたけれども、好きな友達が黄色とオレンジをもらっていたので真似(まね)をした。「たいいく」は「たいく」の間違いだ、これは誤字だと勝手に思いこんでいた。

 今は「しょうせつ」「ずいひつ」の二つぐらいしか科目がない。「そうじ」「かたづけ」などを加えるのはどうか。=朝日新聞2023年11月15日掲載