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虚実の境界線が溶融した最先端「映像表現革命時代の映画論」 杉田俊介の新書速報

『映像表現革命時代の映画論』

 杉本穂高『映像表現革命時代の映画論』(星海社新書・1540円)は、驚くべき進歩を遂げる映像技術の現在地を学ぶための必読書。映像は事実の記録である、という二〇世紀的な映像論の前提はもはや成り立たない。アニメ表現は写実と見紛(みまが)うばかりになり、実写映画は大量にVFX(視覚効果)を使用する。今や虚実の境界線が溶融し、すべてがアニメーション化するかのようだ。俳優の肉体が不要になり、映像として実在した死者が復活し、存在しない世界が本物以上の本物になる。著者は「実写とアニメーションの弁証法」が生み出す混乱と希望の先に「新しい現実」を見つめている。決定的な革命が進行中なのだろう。

★杉本穂高著、星海社新書・1540円

『みんなで読む源氏物語』

 NHK大河ドラマの影響もあり、紫式部関連の著作が多数刊行されているが、渡辺祐真(すけざね)編『みんなで読む源氏物語』(ハヤカワ新書・1122円)は読みやすくバラエティに富んだ入門書。源氏物語が日本人の伝統におさまらず、〈世界文学〉として多角的に翻訳・研究・愛読されてきた、という事実に読者は驚くのではないか。ヴァージニア・ウルフはイギリスモダニズム文学の流れで源氏を書評し、近年はウェイリーの英語全訳版源氏を現代日本語へ「戻し訳」するという実験的試みも行われた。階級論やケア論からの解読も面白い。

★渡辺祐真著、ハヤカワ新書・1122円=朝日新聞2024年1月20日掲載