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〈オススメ〉松本猛「絵本とは何か 起源から表現の可能性まで」

 絵本の表現手法や歴史、可能性という観点から魅力を書き尽くした。200超の作品も登場し、脚注にある書影や見開きが懐かしさを誘う。

 とりわけ絵本が戦後の日本でどう発展を遂げたのかを記した部分は読みごたえがある。福音館書店の設立に加わり、欧米の絵本を研究しながら物語絵本を追求した松居直(ただし)や、至光社を創業し、文よりも絵を重視した武市八十雄(やそお)ら、編集者の試行錯誤を子細にたどった。

 著者は絵本画家いわさきちひろの長男。母の没後間もない1977年には世界初の絵本美術館を立ち上げた。50年余の研究の集大成でもある。

 ある絵本作家が、想定の読者層を「0歳から100歳」と話していた。本書はその言葉通り、絵本には世代や時代をふわりと越えていく力があると改めて教えてくれる。=朝日新聞2025年4月12日掲載