人工知能(AI)による見事な回答や超リアルなバーチャル映像に、不気味さすら感じる人も多いのではないか。
本書によると、ロボットは人間に似るに従い好感度を増すが、そっくりになる直前、突然、嫌悪感を抱くという説があるそうだ。類似度が増すと耐え難くなる、「不気味の谷」と呼ばれる。
AIの紹介や未来予測の書ではない。むしろ、著者はAIを「鏡」として、人間とは何かを問いかけてくる。
その手法が「美学する」だ。美学とは日常的な「感想」を「言葉によって鍛えていく訓練」だという。それを美学・芸術学や情報文化論が専門の著者が、哲学、精神分析学、SF、マンガ、映画、アートなど豊かな知見を駆使して展開。AIと共存するための、自由な思考の訓練をしてくれる。=平凡社新書・1100円(山盛英司)=朝日新聞2025年5月10日掲載
