朝井まかてさん「どら蔵」に吉川英治文学賞 贈呈式で「戦争が一日も早く終わることを」
第60回吉川英治文学賞の贈呈式が10日、都内で開かれ、受賞者の朝井まかてさんがあいさつした。
朝井さんは2008年にデビューして以降、直木賞を受けた「恋歌」をはじめ、数々の時代小説を世に送り出してきた。今回の受賞作「どら蔵」(講談社)は、天保の世を舞台に、江戸の骨董(こっとう)商の世界に飛び込んだ大坂の道具商の放蕩(ほうとう)息子の奮闘を、軽妙な筆致で描いた。
選考委員の浅田次郎さんは、朝井さんの作品について「現代から見た江戸時代の話ではなくて、読者をそのまま昔の世界に抵抗なくいざなってくれる」と語った。言葉の選び方に加え、資料の影が見えないところが優れていると評し、今後の作品への期待を寄せた。
朝井さんは「本当に私は運だけで生きてきました。でも、その運はたくさんの人に支えられてきたものであるという自覚があります」と話し、関係者や家族らに感謝。「これからも、ぼちぼち書いていきます」と、穏やかに話した。
そして、あいさつの終盤に「受賞者の言葉としてはふさわしくないかもしれませんが」と切り出し、こう続けた。「この世界に生きている人間の一人として、あの戦争、この戦争が一日も早く終わることを願います。誰かの支配欲によって、誰かの命や人生や誇りが奪われる。そんなことが一日も早く終わりますように、心から祈ります」。力強く語った朝井さんに、会場から大きな拍手が湧き上がった。(堀越理菜)=朝日新聞2026年4月22日掲載