ドラマ「天狗の台所」Season3 主演・駒木根葵汰さんインタビュー 自然豊かな土地で、誰かと囲む食卓の喜び
―― 2023年にSeason1、翌年Season2が放送されて、今回1年空いてのSeason3となりました。久しぶりの「天狗の台所」の現場はいかがでしたか。
正直なところ、1年空いたという感覚はあまりなかったんですが、また戻ってこれてうれしいという気持ちは大きかったですね。出演作がSeason3まで続くってことは、なかなかないことですから。
撮影は1カ月ほどかけて、富士山がよく見える古民家で行われました。1、2は夏に撮影したんですが、今回は春だったんですね。同じ場所でも季節がひとつずれるだけで景色や食材ががらっと違っていて、その変化も含めて楽しませてもらいました。
―― 駒木根さん演じる飯綱基は、日々の食と素朴な暮らしに静かな情熱を寄せる人物。出演作で派手な髪色をされることも多い駒木根さんですが、「天狗の台所」では黒髪、白シャツ、黒パンツが定番スタイルです。
清潔感がありますよね。基は普段あまり感情を表に出さないタイプですが、実は無類の食いしん坊。僕自身とは少し違うキャラクターですが、基がまとっている穏やかな空気感はすごく好きですね。
東京で暮らすようになって8年ほど経つのですが、いつか自分もこんな自然豊かな土地で、日常の中にある小さな幸せや、誰かと囲む食卓の喜びを感じながら暮らしてみたいなという憧れもあって。毎回、撮影を通じてたくさんの学びがあるので、実際にこういう暮らしを始めるとしてもすんなり馴染めそうな気がしています。
―― 原作漫画の世界観はそのままに、原作者・田中相さん監修のもと、ドラマだけのオリジナルストーリーが展開されています。原作ファンも、漫画とは異なるパラレルワールドとしてドラマを楽しめるのが面白いですね。
原作に対するリスペクトはしっかり持ちつつ、ドラマだけのストーリーが進んでいるので、それぞれ楽しんでいただけたらと思っています。
Season3では、新たな天狗の末裔・白峯凪役の柊木陽太くんや、謎の移住者・國弘譲二役のオクイシュージさんら新たなキャストも登場して、よりストーリーが広がっていきます。過疎化や移住者とのやりとり、町の在り方など、リアルな問題にもつながるような展開で、僕自身もいろいろと考えるきっかけになりました。
――「天狗の台所」の大きな魅力のひとつは料理ですが、Season1、2も含めて印象に残っている料理は何ですか。
Season1の唐揚げおむすびは、塩野くん(愛宕有意役)と敬達(飯綱オン役)が握って僕は食べるだけだったんですが、どれが誰の握ったおむすびか、見たらすぐわかるんですよね。シンプルだからこそ、ほんのちょっとの握り加減で見た目も味わいも全然違うものになるというのが面白いなと思いました。
Season2では、海老の殻で出汁をとった麺つゆでそばを食べるシーンがあったんですが、これがもう格別においしくて。他の料理で使って余った殻を出汁に使うというのが、素材を無駄なく、最後まで扱うという、このドラマで大切にしている部分を体現しているなと思いました。ほんのひと手間かけるだけで、いつもの暮らしが少し特別で、味わい深いものに変わるということが伝わるシーンだなとも感じています。
―― もともと料理はされるほうですか。
小学2年生ぐらいから料理をしていましたし、今も料理はするので、包丁やフライパンの扱いは普通にできますが、Season1のときは、基らしく美しい所作で丁寧に料理できるよう、プロの方にいろいろと教えてもらいました。あと、スイーツは作ったことがなかったので、ケーキやデザートなどを作るのは楽しかったですね。
―― 越山敬達さん演じる弟・オンの成長も大きな見どころとなっています。
年齢的にも、敬達とオンの成長がそのままリンクしているんですが、本当に目まぐるしい成長で驚かされています。
Season1のときの敬達はまだ声変わりもしていなかったんですが、今回の撮影で会ったらもう僕と身長がほとんど変わらなくて。物理的な大きさだけではなくて、現場での振る舞いもすごく変わってきたんですよね。今はしっかり一人の大人として現場にいて、頼りがいもあるし、立派になったなぁと。
少し前に、海外に行く飛行機の中で映画「ぼくのお日さま」(2024年、越山敬達主演)を見る機会があったんです。Season1より前の撮影だったと思うんですけど、映画で敬達の笑顔を見たとき、すごくぐっと来てしまって。こんな風にずっと成長を見てきた子は他にはいないので、最近のグループ活動も含め、弟みたいな感覚で見ています。
成長というと、犬のむぎを演じるホワイトシェパードのスピカも随分変わりました。Season1の頃はまだ1歳にもなっていなかったので、元気いっぱいでなかなかじっとしていなくて、家の中での撮影の途中で庭に走り出してしまう、なんてこともよくあったんですけど、今回はすっかり落ち着いていて。敬達の成長もスピカの成長も、僕としてはうれしいような、ちょっとさみしいような……ちょっと複雑な感情がありますね。
―― Season3では田植えのシーンもあるそうですね。
春の撮影だからこそ実現できたシーンですね。敬達と塩野くんと僕の3人で、田んぼの半分ぐらいまで苗を植えるところを長回しで撮影して、残りはプロデューサーはじめスタッフ全員で協力して植えていきました。僕は農業高校出身なので田植えも経験があったんですが、初めての方もいたと思います。助監督が派手に転んで泥だらけになる、なんていうハプニングもあって、楽しみながら撮影が進んでいきました。
―― 和やかな現場なのですね。
そうですね。1カ月間、同じ場所に泊まり込んで撮影しているので、回を重ねるごとにチームのみんなと心が通じ合ってきている気がします。料理の撮影のあとで、残った料理をみんなで食べたり、食材が余っていたら調理して、休憩のときにいただいたり、大浴場で湯船に浸かりながら、あれこれ話したり。大家族みたいな雰囲気なので、いい意味で仕事という感覚が薄いかもしれません。
―― 台所の調理器具なども、隅々までこだわりを感じます。
美術チームの気合いの入れようも半端ないんですよ。ダイニングテーブルのそばの棚には、漬け物やにんにくの醤油漬けなども並んでいるんですが、それらは撮影の少し前から手作りで仕込んでいるんです。美術チームに限らず、チームの一人ひとりが撮影を楽しんでいるし、情熱と責任を持ってそれぞれの仕事に取り組んでいて、それが作品にも表れているように感じます。
―― 駒木根さんが最近読んで、印象に残っている本はありますか。
最近読んだ本だと、ハン・ガンさんの『すべての、白いものたちの』が好きですね。物語のような、エッセイのような、散文詩のようにも感じられる文章で、最初に読んだときは静かで優しいお話だなと感じました。でも4日後にまた手に取って読んだときは、美しく儚げな世界観が心に響いて、ぽろぽろと涙がこぼれてしまって。1回目に読んだときと2回目に読んだときで、ここまで気持ちが変わる本は初めてでした。
―― 気に入った本はくり返し読まれるのですか。
気に入った映画はくり返し見ますが、本は時間がかかるので、何度も読むことはあまりありません。ただ『すべての、白いものたちの』については無性に読み返したくなって、何度か読みました。ボリュームもそこまでないので、さーっと読めるんですよね。その後は、白いもの、純粋無垢なものに対する心の持ちようが変わった気がします。雲をぼーっと眺めたりとか、白いものがあると思わず見つめてしまいます。
―― 小説を読むことが多いですか。
20代前半の頃は、仕事に役立てたいという思いもあって、哲学や純文学などを読み漁ったこともあったんですが、今はわりとジャンルレスに、気になった本を手に取って、純粋に自分が楽しいなと思うものを読むようになりました。人生は一度きりなので、いろんなものを見て、いろんな人の考えを知りたいという気持ちが大きいですね。俳優という仕事も、様々な人生を追体験できるところが醍醐味でもあるので、大きなやりがいを感じながら楽しんでやらせてもらっています。