- 『新しい「公共」入門 思いがけない出会いをつくる』 山本圭著 岩波ジュニア新書 1034円
- 『中国近現代史』 中村元哉著 中公新書 1320円
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世界大戦、革命、グローバル化。この百年あまり、人類史は激動の連続だった。その結果、私たちは現在も重大な課題に直面している。
(1)は、公共という難解な政治思想を明晰(めいせき)に整理する。20世紀の大衆社会の成立は、人々の個性を失わせ、全体主義国家の支持へと向かわせた。その反省から第二次大戦後に重視されたのは、公共空間において人々が複数の価値を示すことや、討論や、熟議だった。だが公共空間が縮減され、ネット空間も断片化する今日、人々は「中立」を装うばかり。価値観の表明は忌避され、公共は再び危機にある。罵倒ではなく、論争相手への生産的な批判をいとわぬこと、そして見知らぬ他者との偶然の出会い(「セレンディピティ」という)を愛(め)でること――危機への著者の処方箋(せん)は現実的で、説得的である。
近代西洋社会が生み出した憲政やリベラリズムの影響は、異なる地域へも波及した。(2)は近現代の中国史を、世界史や香港や台湾の視角から、大胆に描き出す。西洋に共鳴するか、伝統中華と結合させるか、抵抗するか。その選択の繰り返しが中国史だというのだ。女性史の知見が随所にみられ、公共空間の主体は男性だけではなかったと痛感させられるのも、本書の特徴だ。政治史だけではなく、ミクロな日中関係史も強調する著者の新しい中国観は、「不正常な関係にあっても、双方の交流を途絶えさせないように水面下で努力」する日中両国の人々への、力強いエールである。=朝日新聞2026年10月17日掲載