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「障害者福祉ビジネス」書評 弱者の生活を搾取 隠れた実態

評者: 秋山訓子 / 朝⽇新聞掲載:2026年10月31日
障害者福祉ビジネス 食いものにされる税金と利用者 (集英社新書) 著者:市川 亨 出版社:集英社 ジャンル:福祉

ISBN: 9784087214260
発売⽇: 2026/09/17
サイズ: 10.6×17.3cm/288p

「障害者福祉ビジネス」 [著]市川亨

 母の介護が必要になった時、ケアマネジャーをどの事業所に依頼するか途方にくれた。自治体の担当者は「ケアマネによって、お母様のその後の人生が左右されます」、実際、ひどい人もいると側聞していた。だが情報は少なく、その情報も信頼できるかわからない。あれこれ手を尽くし良い人が来てくれたが、恐ろしいギャンブルみたいだと感じた。
 この本には障害者福祉で、「ギャンブル」で大こけした例がこれでもかと出てくる。トコジラミがわき、夕食は3日間同じ。お仕置き部屋で暴行が行われ、落ち着かせるために家族に相談なく投薬量を増やし、面会に行くとうつろな表情でよだれを垂らしていた――。
 診療報酬を得るために不必要な人にまで訪問看護。訪問時間が30分を超えると報酬額が増えるから、看護師の滞在時間を31~35分にする。そのために無言で滞在する看護師もいる。弱い立場の人々を搾取し、税金をむさぼる。コンサル会社のセミナーの広告には「福祉が今最も狙い目!」。
 背景には、障害者が暮らす場を大規模な入所施設から地域の小規模なグループホームに移す地域移行という政策がある。だが私たちはホームの中で何が行われているか知らない。問題のある事業者を減らすためには、AIを使った不自然なお金の出入りのチェックや潜入による調査も行われるべきだ。自治体議会も、不埒(ふらち)な施設はどんどん俎上(そじょう)にのせてほしい。
 一筋の光と思えるのは、グループホームで大変な目にあい、退去した自閉症の青年のその後だ。両親の家の近くの小さな家でヘルパーの助けを借りて暮らす。この家で定期的にいろいろな人が自由に集まれる交流会を開き、外を歩けば近所の小学生が声をかける。これが本当に地域に開かれているということだ。
 著者は共同通信の記者。活字化にはこの何倍もの取材が必要だったろう。久々にマスメディアの底力を感じた一冊。
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いちかわ・とおる 1972年生まれ。ホスピス型住宅や訪問看護の不正に関する報道で日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞。