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「不倫が好きな文豪たち」書評 甘美な視点の日本文学ガイド

評者: 秋山訓子 / 朝⽇新聞掲載:2026年11月07日
不倫が好きな文豪たち 未読でも既読でも楽しめる日本文学入門 著者:イザベラ・ディオニシオ 出版社:KADOKAWA ジャンル:文学・評論

ISBN: 9784041164921
発売⽇: 2026/10/01
サイズ: 13×18.8cm/296p

「不倫が好きな文豪たち」 [著]イザベラ・ディオニシオ

 恋をすると人は心が波打ち、沸き立ち、燃え上がる。ましてやそれが禁じられていたら。怒濤(どとう)の波が押し寄せ、沸点を突き抜け、炎も荒れ狂う。だから古今東西、文学にとって不倫はたまらない素材だ。日本文学を愛してやまないイタリア人による不倫を通じてみた日本文学ガイド。
 平安の世の「源氏物語」から昭和の「阿修羅(あしゅら)のごとく」まで。著者の言うとおり不倫の意味は時代で変わる。本書にも登場する近松門左衛門が不義密通を描き大衆を熱狂させた江戸時代、不倫は死罪にもなる大罪だった。だからこそ甘美な蜜の味にもなる。溝口健二の名作映画「近松物語」のラストシーン(必見です)を思い出した。
 それにしても谷崎潤一郎や三島由紀夫の日本語の豊穣(ほうじょう)さと流麗さよ。谷崎の「痴戯」という、たった二文字で、想像と妄想は極限を超えて止まらない。三島の描写するスリップときたら「沈んだうすい冬空のような青で染めたレエス」(もちろん絹)‼ 「美徳のよろめき」、早速購入しました。名ガイドのもくろみにまんまとはまったのだった。