ニューヨークにて、エドガー賞パーティーに出席してきました。ノミネート者の名札を付けて、まずはカクテルパーティーへ。メイン会場の大ホール横にある小ホールに入ると、大勢の人たちがグラスを片手に歓談しています。勝手がわからずおろおろしている私に、近くにいた人たちが名札を見て、「コングラチュレイション」と声をかけてくれました。何部門? どんな内容? などと聞かれ、別れ際には「グッド・ラック」です。
そのうち、写真撮影が始まりました。部門ごとの候補者を集め、記念撮影をするというのです。ライバルたちと顔を合わせるなんて、日本では考えられません。おそるおそる撮影パネルの前に行くと、他の候補者たちから「コングラチュレイション」と笑顔で迎えられました。私も同様に返し、寄り添った状態で、笑いっぱなしの撮影会でした。そして、ここでも別れ際には「グッド・ラック」です。一人しか選ばれないのに……。
さらに驚いたのは、同じ会場に、ジャッジの名札を付けた選考委員もいて、発表前だというのに、作品のよかった点をあげたり、周囲の人たちに私の作品を紹介したりしてくれるのです。エドガー賞の選考委員は、必ずしも作家ではありません。また、一年ごとの交代だそうです。
そのため、会場に集った作家たちに、選ぶ側と選ばれる側、といった隔たりはありません。神のような存在の大物作家も、新人作家も、日本からやってきた私も、「2017年に米国で本を刊行したミステリ作家」であるだけなのです。だから、作品が評価され、ノミネートされたことを讃(たた)え合い、パーティーに出席できたことを喜び合う。受賞は、ちょっと素敵(すてき)なオマケのようなものなのです。
メインパーティーは、ミステリ好きにはたまらないショーのような構成で、その場にいられることが何よりも光栄で、本当に楽しかった! 応援してくれた方々の期待に応えられなかったことは残念でしたが、また絶対に、あの夢のような場に出席したいと願っています。=朝日新聞2018年5月7日掲載
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