「浮世絵細見」書評 浮世絵#ギリギリのところまで
評者: 椹木野衣
/ 朝⽇新聞掲載:2017年10月22日

浮世絵細見 (講談社選書メチエ)
著者:浅野秀剛
出版社:講談社
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784062586603
発売⽇: 2017/08/10
サイズ: 19cm/317p
浮世絵細見 [著]浅野秀剛
浮世絵は誰もが身近に感じる日本美術の代表。欧米での人気もうなぎのぼり。が、こんなにわかっていないことが多かったとは。
そもそも洋画や日本画さえ西洋の美術をモデルに明治時代に作り出された。浮世絵の全盛期に「美術」という言葉はなかった。私たちが浮世絵を美術館で鑑賞するのと違い、もとは私的な楽しみのため市井で売り買いされるものだった。
そんなことは知っていると言うかもしれない。ところが、買い手が浮世絵をどのように持ち帰ったのかさえ、実はよくわかっていないらしい。展示や画集になれっこになっているから、いちいち想像などしない。しかしそれで本当に浮世絵を身近に楽しめていると言えるだろうか。
本書は、こうした謎を最新の知見にもとづき、現時点でわかるギリギリのところまで教えてくれる。親切な浮世絵の入門書は少なくない。けれども、わからないことをここまで教えてくれる本は初めてだ。