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「絶滅危惧種ビジネス」書評 養殖ビジネスに群がる人間模様

評者: 市田隆 / 朝⽇新聞掲載:2018年02月25日
絶滅危惧種ビジネス 量産される高級観賞魚「アロワナ」の闇 著者:エミリー・ボイト 出版社:原書房 ジャンル:暮らし・実用

ISBN: 9784562054664
発売⽇: 2018/01/18
サイズ: 20cm/334p

絶滅危惧種ビジネス―量産される高級観賞魚「アロワナ」の闇 [著]エミリー・ボイト

約3千万円で取引されたこともある世界一高価な観賞魚アジアアロワナ。中国などの富裕層に人気は高まる一方で、なぜそれほど人を引きつけるのかと興味を抱いた米国人ジャーナリストが3年半かけて、アロワナが生息する奥地、養殖ビジネスの現場など世界各地を訪ねる。魚の強盗殺人まで起こるほど欲にまみれた、高級魚に群がる人間模様を濃厚に描き出した。
 ワシントン条約で絶滅危惧種として取引が規制されているが、合法の養殖による輸出は過去に約150万匹と矛盾した状態にある。規制が愛好家の希少種志向をあおって法外な価格の原因になり、野生種は密漁で激減したと本書は指摘。自然保護のありようについて考えこんでしまう。
 希少価値の野生種を一目見たいと著者は危険を冒して東南アジアの奥地で探すが難航。さらに、アロワナの別種がいるアマゾン上流域に踏み込む。その情熱あふれる探検記の部分が、本書の清涼剤になっている。